NMNは効くのか?
NMN(ニコチンアミド・モノ・ヌクレオチド)は、ビタミンB3(ナイアシン)から作られる食品成分です。
NMNは体内に入ると、補酵素NAM(ナイアシン・アミド)に変換され、さらにNAD(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド)になります。
NADは「長寿遺伝子」である「サーチュイン酵素」を活性化することで、老化を遅らせ健康寿命を伸ばす効果があると言われています。果たして、それは本当なのでしょうか?
サーチュイン酵素が活性化すると…?
サーチュイン酵素は、7種類あります。そのどれが活性化されるかによって、結果が異なります。
例えば、サーチュイン1(SIRT1)が活性化すると、脂質代謝やインスリン分泌が活性化されます。ですから、ダイエットや糖尿病に有効でしょう。
サーチュイン3や6が活性化すると、健康寿命を伸ばせるでしょう。
ところがサーチュイン2が活性化すると、アルツハイマー型認知症になります。
どのサーチュイン酵素が活性化されるか分かりませんから、運が悪いとアルツハイマー型認知症になってしまうということです。
長寿効果は、まだ不明
NMNが脚光を浴びたのは、ワシントン大学医学部発生生物学部門・医学部門の今井眞一郎教授が行なった実験が放映されたからです。今井教授は、「サーチュイン」という酵素が老化や寿命を制御しているという事実を発見した老化研究者です。
しかし、実験はマウスによるもので、NMNの投与量は100~300mg/kgでした。これを体重50kgの人間に換算すると、1日5,000~15,000mgに相当します。
人間がサプリメントで推奨されている摂取量は1日300~600mgで、大量に摂取するとどんな副作用がおきるか分かりません。そのため、大量摂取は危険と言われています。
そして、「ヒトにNMNを投与して寿命が伸びるかどうか?」を調べた研究はまだありません。したがって、人間がNMNを服用して寿命が伸びるかどうかはまだ不明なのです。
ところが一部の健康食品業者がいち早く飛びついて、かなり高額で販売しています。私には「誇大広告」としか思えません。
カロリー制限で老化が早まる!
摂取カロリーを制限すると、サーチュイン酵素が活性化すると言われています。しかし、この説は、アカゲザルやラット、モルモットなどの動物実験の結果であって、人間にそのまま当てはまるわけではありません。実験動物は衛生的に管理されていますから感染症に罹ることはありませんし、寿命も人間とは大きく異なります。
人間の場合はカロリー制限することによって、腸の絨毛が萎縮して栄養の吸収が悪くなってしまいます。その結果、栄養失調によって筋肉や骨量が減少していき、貧血になり活力が低下し、老化を早めてしまいます。
体力は筋肉量で決まる
「体力は筋肉量で決まる」といっても過言ではありません。歳をとって体力が低下するのは、筋肉量が減るからです。体温の大半を作っているのは筋肉ですから、筋肉が減れば体温が低くなり、体温が低くなれば免疫力が弱くなります。すると、感染症やガンに罹りやすくなります。
ですから若さや体力を維持するには、筋肉量を増やすことが大事です。
しかし、「タンパク質さえ摂っていれば、筋肉が増える」という考えは間違いで、糖質が足りないと筋肉は減っていきます。
脳のエネルギー源は、100%ブドウ糖です。糖質を摂らないと、低血糖になります。すると脳にブドウ糖を送るために筋肉が分解され、筋タンパクをブドウ糖に作り変えます。これを「糖新生」といいます。こうして糖新生をくり返していると、どんどん筋肉が減っていきます。
たとえタンパク質をたくさん摂っても、糖質を摂らないと筋肉は増えません。なぜかというと、タンパク質を筋肉に変えるには「インスリン」が必要だからです。インスリンが筋肉の合成に必要で、インスリンを出すには糖質を摂る必要があるのです。
つまり筋肉を増やすには、ご飯と動物性タンパク質を十分に摂る必要があるのです。
ところが世の中には、ご飯も動物性タンパク質も害悪とみなして、ほとんど食べない人もいるのです。
ある中古車販売会社の会長を務めている76歳の男性は、毎朝起きてすぐに腕立て伏せを連続で100回行なってから、1時間体操をして、昼から社交ダンスを2時間した後、ジムで1時間ほど泳ぐといった生活をしていました。
毎日これだけ運動しているにもかかわらず、足腰はやせ衰えて、お腹には贅肉がたっぷり付いていて、背中はシミだらけでした。この男性は20年以上にわたって動物性食品をまったく摂ってこなかったので、筋肉がかなり減っていました。
そのうえ、長寿遺伝子をオンにするため極度なカロリー制限をしました。すると間もなく、左耳がまったく聞こえなくなってしまいました。栄養やカロリーが足りないと長寿どころか、衰弱して老化を早めてしまうのです。