認知症を防ぐ6要素
認知症は、何か一つの要素だけでは防げません。つまり、「これさえ食べたり飲んだりすれば防げる」といった食品や薬があるわけではないのです。
認知症を防ぐには、少なくとも6つの要素がすべて満たされる必要があるでしょう。
歯周病を防ぐ
まずは、歯周病を防ぐことです。歯周病は、認知症を引きおこす大きな原因だからです。
歯周病によって、なぜ認知症になるのでしょうか?
歯周病菌が分泌する毒素が、たえず口腔内で微細な炎症をおこすことによって、血液中の炎症性サイトカインが増えます。炎症性サイトカインは、「炎症をおこせ!」というメッセージ物質です。
炎症性サイトカインは脳の免疫細胞を刺激して、異常なタンパク質「アミロイドβ」を作り出します。そしてアミロイドβが脳に蓄積していくと、神経細胞が破壊されていき、脳が萎縮していきます。その結果、「アルツハイマー型認知症」になるのです。
したがって認知症を防ぐためには、歯周病を防ぐことがもっとも重要なのです。
それには、『定期的に歯科衛生士に歯垢を除去してもらう』ことです。そうすれば、歯垢が除去できるだけでなく、歯周病を早期に見つけて治すこともできます。
もちろん、毎日のケアも重要です。
しかし、「歯を磨く」のは逆効果で、とりわけ研磨剤や界面活性剤が入った歯磨き剤で、力を入れてゴシゴシ磨くのは止めたほうがよいでしょう。歯のエナメル質がなくなったり歯茎が傷ついたりして、かえって虫歯や歯周病になりやすくなるからです。
また、「食後に磨く」のも止めたほうがよいでしょう。虫歯になりやすくなるからです。
虫歯ができるのは、ミュータンス菌などが糖質を分解して「酸」を生み出して、その酸が歯の表面のエナメル質を溶かすからです。この歯の溶解は、食べ始めて3分後には始まるのです! つまり食後は、酸によって歯のエナメル質が溶けているのです。この溶けているときに磨いたりすれば、さらにエナメル質がなくなって虫歯になりやすくなるのです。
ですから食後は、歯間に詰まった食べカスを除去して、軽くすすいでおく程度で十分なのです。
食べ終わって20分か30分すれば、酸が唾液で中和されて、リン酸カルシウムが歯に沈着していってエナメル質が修復されます。
つまり、『虫歯は唾液が防ぐ』のです。唾液を十分に出すには、よく噛んで食べることです。
そして、『間食をしない』ことです。間食が多いと、歯の溶解が頻繁にくり返されて、修復時間も不十分になるので、虫歯になりやすくなるからです。特に、小麦粉菓子・飴・キャラメルのようにベタベタしている食品は、砂糖が歯に長い時間粘着するので、修復が遅くなります。
また、『歯の清掃・除菌』も重要です。「磨く」のではなく「清掃と除菌」をすることです。
抗菌作用がある洗浄剤やペーストを歯ブラシに付けて、「歯と歯の間」「歯と歯茎の間」を丁寧にブラッシングすることが虫歯や歯周病を防ぐ秘訣です。
ブラシは硬めのほうが、弱い力で汚れを除去できます。軽くブラッシングするには、「歯ブラシをできるだけ弱く握る」ことです。電動歯ブラシを使うのもよいでしょう。
とりわけお勧めの電動歯ブラシは、朝日医理科製の『スマイルエックスAU-300D』です。160万Hzの超音波振動によって、歯にこびり付いた不溶性グルカン(歯垢の元)を除去できます。
歯の清掃・除菌をする効果的な時間は、「夜寝る直前」と「起床直後」です。口腔内の細菌は、夜寝ている間に増えるからです。
胃腸を健全に保ち、栄養を十分に摂る
脳の機能を健全に保つには、栄養もしっかり摂る必要があります。
栄養を十分に摂るには、まず胃腸の機能が健全でなければなりません。胃腸が虚弱だと十分に食べられなくなり、消化も悪くなり、栄養が十分に摂れなくなります。すると脳に必要な栄養が不足し、貧血になれば脳が酸欠になってしまいます。
したがって、胃腸の機能を健全に保つことがきわめて重要です。
そして、脳が必要とする栄養をしっかり摂ることが大事です。
脳がもっとも必要とする栄養は、ブドウ糖です。脳の神経細胞は、ブドウ糖からATP(アデノシン三リン酸)を生成して活動しているからです。脳が必要とするブドウ糖を補うには、「ごはん」をしっかり食べることです。
糖質制限をすると、脳のエネルギー源であるブドウ糖が不足します。脳のエネルギーが枯渇すると死んでしまうので、何とかしてブドウ糖を作り出して脳に送ろうとします。どうするかというと、『筋肉を分解してブドウ糖を作り出す』のです。これを「糖新生」といいます。
糖新生のために、はじめに犠牲になるのは「脚」なので、太ももやふくらはぎがやせ細っていきます。その結果、足腰が弱くなり、腰痛や膝痛になりやすくなります。たとえ見た目に細くなくても、筋肉量が減って脂肪が増える「サルコペニア肥満」になれば、さらに足腰が弱くなり、腰椎や膝関節が変形していき、ついには歩けなくなります。
したがって足腰の筋肉を維持するには、ごはんをしっかり食べないといけないのです。
また、脳の神経細胞の60%は脂肪、残り40%はタンパク質でできています。
ということは、タンパク質と脂肪をしっかり摂らないと脳を維持できないわけで、それには、肉や魚をしっかり食べなければいけません。
つまり、脳のエネルギー源として「ごはん」を、脳の材料として「肉と魚」をしっかり食べることが、脳の機能を維持するために大事なのです。
「サプリメントで栄養を摂ったつもり」になっている人は、認知症リスクが高くなります。
サプリメントをいくら飲んでも、脳のエネルギーも材料もたいして摂れないうえ、さらに重大な欠点があります。
噛むことによって、歯や歯茎を丈夫に保て、脳への血流も増えます。また、ごはんや肉や魚をよく噛んで食べることで、脳に「おいしい」という感覚が伝わって脳が活性化するのです!
ところがサプリメントは噛まずに飲み込んでしまいますし、おいしさもまったく感じません。これが脳に良いわけないでしょう。
足腰の運動
足腰を使った運動をすると、筋肉から「脳の神経細胞を修復するホルモン」が分泌されます!
例えば、脳由来神経栄養因子(BDNF)、インスリン様成長因子(IGF-1)、線維芽細胞成長因子(FGF-2)、血管内皮成長因子(VEGF)などといった成長因子です。筋肉から分泌されたこれらの成長因子は、血流によって脳に運ばれて、ニューロンの修復を促します。
とりわけBDNFは、脳内で保護タンパクの生成を増やし、新しいニューロンを成長させます。
また運動すると体脂肪が分解されて、血液中の遊離脂肪酸が増えます。すると、血液中のアルブミンがトリプトファンを切り離して増えたBDNFが脳内のセロトニンを増やすため、安心感を高めて不安を減らします。
さらに、運動はガンマアミノ酪酸(GABA)の分泌も促します。GABAは脳の興奮を鎮める神経伝達物質で、不安や強迫観念などを減らす効果があります。
精神的ストレス
精神的ストレスがあると、脳下垂体からACTH(副腎皮質刺激ホルモン)が分泌されて、副腎からコルチゾールが分泌されます。ストレスが強くなるほど、血液中のコルチゾールが多くなります。
血液中のコルチゾール濃度が高くなると、脳の記憶中枢である「海馬」が萎縮していきます。そのため強い精神的ストレスが続くと、記憶力が低下していきます。その結果、徐々に物忘れが激しくなっていき、思い出す力や思考力や判断力などが弱くなっていくのです。
脳を守るには、「ストレスを減らす工夫」も大事なのです。
対話
理性や創造力や集中力などを司っているのは、「前頭前野」といわれる部位です。この部位は、計算や漢字の学習などをしてもあまり使われません。
前頭前野がもっとも活性化するのは、人と話しているときです。しかし、電話で話してもあまり効果がありません。前頭前野は「相手の表情から、相手の気持ちを理解する」ので、『顔を見ながら話す』ことで活性化するのです。
また前頭前野は、料理をすることでも活性化しますし、新しい体験でも活性化します。したがって、小旅行で知らないところに行って、食べたことのない食品を食べたり、店員さんと話してみたりするのも効果的でしょう。
血栓症を防ぐ
以上、認知症を防ぐために不可欠な要素を5つ解説しましたが、ほかにも認知症の原因になることはあります。
例えば、「血栓症」です。とくに血栓が脳の毛細血管に詰まっていくと、「脳血管型認知症」になります。アルツハイマー型と違って、日によって良かったり悪かったりをくり返しながら、徐々に進行していきます。いわゆる「まだらボケ」と言われる認知症で、主な原因は「血栓」です。
血栓の生成を防ぐ薬を飲むのもよいと思いますが、それより大事なのは、「体水分量を保つ」ことです。水分量が減ると血液がドロドロになって、血栓症をおこしやすくなるからです。
例えば、サウナや入浴やホットヨガなどで汗をガンガンにかくと、血液の水分が減ってドロドロになりますから非常に危険です。また、暑いのに冷房を使わないで我慢しているのも危険です。
また、水を飲んでも体水分は増えません。水をいくら飲んでも、すぐに尿で出ていってしまうからです。そして尿にはミネラルが含まれていますから、排尿するたびにミネラルが失われていきます。
ですから、体水分を増やすには、水とミネラル(ナトリウムとカリウム)を併せて飲むことが大事なのです。それが「松原式補水液」です。500mlを3~4回に分けて飲めば、体水分量を増やしていけます。OS-1のような市販の補水液には「果糖」や人工甘味料が含まれていますので、できるだけ自分で作って飲むほうがよいと思います。
「松原式補水液」
水/炭酸水/お湯:500ml
やさしお:2g
粉末ブドウ糖:10g
クエン酸:少々