胃腸の粘膜バリアを強化するアミノ酸

胃腸の粘膜バリアが弱くなると、腸内細菌や未消化なタンパク質が血液に侵入するようになります。それが「リーキーガット」です。

腸から腸内細菌や未消化なタンパク質が血液に侵入すると軽度な炎症(慢性炎症)がおきて、血液中に「炎症性サイトカイン」が増えます。「炎症をおこせ!」というメッセージ物質が全身に循環することで、身体のあちこちに炎症がおきやすくなります。

したがって、どんな炎症でも治すには、炎症性サイトカインを減らすことが重要で、それには胃腸の粘膜を強化して、腸内細菌や未消化なタンパク質が血液に侵入するのを防がないといけません

胃腸の粘膜バリアを強化するアミノ酸を2つ紹介しましょう。

 

グルタミン

グルタミンは、胃腸でもっとも消費されるエネルギー源で、リーキーガットを修復するために不可欠なアミノ酸です。

グルタミンは肝臓で合成されますから、健康なときは食事から摂る必要はありませんが、病中病後や術後、大ケガをしたとき、胃腸が悪いときやストレスが多いときなどはグルタミンを摂取することで回復を助けることができます。

グルタミンは「胃腸の粘膜を厚くする」とともに、胃腸のぜん動も促します。それによって胃腸から細菌や未消化なタンパク質が血液に侵入するのを防ぐとともに、腸内でカンジダ菌が増殖するのを抑制します。

ちなみに、カンジダを減らすために殺菌力が高い精油を飲むと、胃腸の粘膜バリアが損なわれてしまうので逆効果になります。川の水が勢いよく流れていれば菌が繁殖することはありませんが、流れが止まればたちまち菌が増殖して水が腐敗してきます。川の水と同じで、腸内にカンジダが増殖するのを抑えるために何より重要なのは動くことです。つまり、胃腸のぜん動が活発になれば菌の増殖を抑えられるのです。

グルタミンは胃腸のぜん動を促して便通を改善し、腸内のカンジダ増殖も防ぎます。

 

さらに、もっとも重要な機能として「免疫力を正常化する」作用があります。グルタミンは免疫細胞を強化してウイルスや病原細菌の感染を防ぐ一方で、免疫が暴走して(自己抗体がつくられて)自己免疫疾患が引きおこされることを防ぐ作用もあるのです。

グルタミンは肝臓で抗酸化物質の「グルタチオン」の生成を促すことで、身体全体の老化を防ぐ効果もあります。わざわざ高価なグルタチオンのサプリメントを購入しなくても、安価なグルタミンを飲めば体内でつくられるのです。

またグルタミンは、うつや怒り、疲労困憊にも有効です。グルタミンは、脳を興奮させる神経伝達物質:グルタミン酸と、脳の興奮を抑える神経伝達物質:GABAの両方に変化して、興奮と抑制のバランスを保つことで脳の異常興奮や落ち込みを防ぐのです。

 

これだけ有益な作用があって、いたって安全であることが証明されているにもかかわらず、「グルタミンはガンを悪化させる」といった誤情報を信じている人もいます。

しかし実際にはその真逆で、「グルタミンはガンの治癒を助ける」のです。

福岡の50代の男性が、肝臓ガン(肝外育成型)が破裂して突如、入院することになりました。どういう治療を選択すべきか相談されたので、できるだけ早く切除するようにとアドバイスしました。ガンは転移してしまったら、予後が非常に悪いからです。

その男性は主治医と相談して、「まずガンに血液を供給している肝動脈を塞栓術で兵糧攻めにして、ガンがある程度小さくなってから切除する」という方法を行なうことにしました。

塞栓術を行なって退院した後、毎日大量の寝汗をかいて、下着を2回着替えていました。ところがグルタミンを飲み始めた日の夜から、朝まで一度も目が覚めず、睡眠スコアも85と最高値まで上がり、寝汗もかかなくなりました。

それから1ヶ月後、腫瘍が1センチ縮小し、2万もあったガンマーカーが正常値になりました。主治医も「これだけ早い退縮は見たことがない」と驚いているようです。

また、抗ガン剤を5回行なっても肝機能(AST・ALT)がほぼ正常値なので、これにも主治医が驚いているということです。

これらは、グルタミンによる効果です。彼は、3時間おきに5gずつ計6回、1日30gを飲むようにしています。それによって主治医も驚くほどの回復力を示し、抗ガン剤の副作用もほとんどない状態を維持できています。

米マサチューセッツ州の産婦人科医のジュディ・シャベート博士(Dr. Judy Shabert)は著書『究極の栄養素:グルタミン(The Ultimate Nutrient Glutamine)』で、次のように説明しています。

「グルタミンを投与するだけでガンが消失することはないが、グルタミンを十分に摂ることで抗ガン剤や放射線による弊害を最小限に抑えることができる

 

なおグルタミンは熱と酸に弱いため、お湯に溶かしたり、クエン酸やビタミンCと混ぜたりしてしまうと、グルタミン効果が失われてしまいます。ブドウ糖やミネラルと混ぜるのは問題ありません。(松原式補水液に加えるなら、クエン酸は入れないこと)

水または炭酸水にグルタミンを溶かしたら、なるべく早めに飲むようにしましょう。もし全部飲みきれなければ、冷蔵庫に入れておくことです。

摂取量の目安は1日5g~15gで、病気によっては最大40gまで大丈夫です。量をたくさん飲む場合は、3~6回くらいに分けて飲むとよいでしょう。

 

グルタミン酸

グルタミンと同様に、グルタミン酸にも胃腸の粘膜を強化する作用があります。

グルタミン酸といえば「味の素」のことで、身体に悪いものであるかのようなイメージが完全に浸透しています。

ところが、味の素(グルタミン酸)が悪いというのは、明らかな誤情報なのです。

およそ50年前に、中華料理を食べた後に頭痛や顔面紅潮、発汗などといった症状が現れた人がいて、「中華料理に多用されていたグルタミン酸が原因ではないか?」と疑われ、「中華料理症候群」と呼ばれました。

そこで、本当にグルタミン酸が原因なのか調べられました。しかし、グルタミン酸を大量に投与しても中華料理症候群を再現することはできませんでした。グルタミン酸が原因ではないことが証明されたのです。

グルタミン酸は安全性がきわめて高いことが証明されているのです。ところが、一度ついた悪いイメージはなかなか修正されないのです。化学調味料という言い方も、石油から作られているかのようなイメージを与えるのでしょう。

しかし実際は、さとうきびを発酵させて作られている「発酵食品」なのです。

味の素の成分は、グルタミン酸が97.5%を占め、残りはイノシン酸とグアニル酸です。

これらの成分は、昆布やカツオ節、シイタケなどから抽出するダシの成分とまったく同じなのです。

 

グルタミン酸はまったく悪くないどころか、胃腸の粘膜を強化して、胃腸の働きを高める作用があることが明らかになっています。

京都薬科大学・病態薬科学系薬物治療学分野の天ヶ瀬紀久子助教授らが行なった「グルタミン酸による消化管粘膜保護作用」[1]という研究があります。

食事でグルタミン酸を少し摂取することで、ピロリ菌の感染や痛み止め(非ステロイド消炎鎮痛剤)の服用によっておきる胃腸の傷害(胃潰瘍や胃炎など)を防げるということです。

また、食事から摂取したグルタミン酸はほぼすべて腸で消費されて、血液中にはほとんど入りません。ですから、グルタミン酸によって脳が異常興奮をおこすはずがありません。

ダシの旨味で食事がおいしくなるだけでなく、胃腸の保護作用まであるのですから、利用しないのはもったいないでしょう。グルタミンと違って熱や酸にも強いので、食事と一緒に摂るにも適しています。

[1] YAKUGAKU ZASSHI 131(12)1711-1719 (2011)

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