アレルギーを改善する秘訣①抗体はなぜできるのか?

花粉症や喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなどは、すべてアレルギー反応によっておきます。

アレルギーをおこすのは、「抗体」と「炎症性サイトカイン」です。いずれも免疫物質で、「毒」ではありません。ですから、「毒を出せば治る」という考えでは治りません。つまりデトックスしても意味がないのです。減らさなければいけないのは、抗体と炎症性サイトカインです。

どうしたら、抗体と炎症性サイトカインを減らすことができるでしょうか?

 

なぜ、「抗体」が増えるのか?

抗体はリンパ球がつくる免疫物質で、IgA、IgG、IgM、IgD、IgEの5種類あります。

このなかでアレルギーに関係するのは、IgEとIgGです。これらの抗体が多いほど、アレルギーがおきやすくなります。

IgEが引きおこすのは「即時型アレルギー」で、アレルゲンが侵入するとすぐに激しいアレルギー症状がおきます。

それに対してIgGが引きおこすのは「遅発型アレルギー」で、アレルゲンが侵入してから数時間から数日たってから軽度なアレルギー症状が現れます。

IgEには無反応でもIgGでは高い反応がみられることもありますし、その逆もあります。

IgEやIgGは、なぜ増えてしまうのでしょうか?

 

それは、血液に「タンパク質が侵入するから」です。

タンパク質は、アミノ酸の集合体です。タンパク質を摂取すると胃腸の消化酵素で<タンパク質→ポリペプチド→ペプチド→アミノ酸>と分解されていって、アミノ酸になってから腸から吸収されます。そして吸収されたアミノ酸から、遺伝子に基づいて「自分のタンパク質」をつくっていくのです。これが、正常なタンパク質の消化・吸収・同化です。

ところがリーキーガットになると、未消化なタンパク質(ポリペプチドやペプチド)が腸から血液に入ってきます。すると免疫細胞が、「自分のタンパク質ではない異物が侵入した」とみなして攻撃して排除しようとします。臓器移植をすると拒絶反応がおきるのと同じです。

臓器移植でも腸からの侵入でも「自分のタンパク質ではないもの」が入ってくると、免疫は攻撃して排除しようとするのです。その際に、タンパク質を攻撃するミサイルが「抗体」です。つまり、不法侵入したタンパク質を破壊するための武器が「抗体」なのです。

そして、異物を攻撃するために軽度な炎症がおきます。すると血液中に「炎症性サイトカイン」が増えます。サイトカインは免疫細胞のメッセージ物質で、そのメッセージは「炎症をおこせ!」です。

こうして「炎症をおこせ!」というメッセージが全身に循環することで、身体のあちこちで炎症がおきやすくなります。つまり、炎症性サイトカインが増えるほど、アレルギー症状が悪化するのです。

 

皮膚からタンパク質が侵入すると「抗体」ができる

2015年に、ロンドン大学の教授・アレルギー研究会の重鎮であるギデオン・ラック博士が、「子供たちが早い段階で敢えてピーナツを食べることによって、ピーナツアレルギーを予防できる」ことを発表しました。

ラック博士は、親や兄弟にピーナツアレルギーの発症者がいる600名以上の生後6ヶ月から11ヶ月の赤ちゃんの協力をとりつけました。そして、この赤ちゃんを2つのグループに分けて、半数のおよそ300名には、医師の指導の下で、週3回以上、一定量のピーナツを食べ続けてもらい、もう半数には、ピーナツを徹底的に避けてもらいました。

その結果、5歳になった時点で、ピーナツを避けた子供のグループでは、17.3%がピーナツアレルギーを発症したのに対して、ピーナツを食べ続けた子供たちのグループは、わずか3.2%の発症率でした。

ラック博士が、ロンドンに住む未就学児1万2000人について調査した結果、「ピーナツアレルギー発症者の91%が、生後半年以内にピーナツオイル入りのスキンクリームを使っていた」ことが判明しました。とりわけ、肌荒れや皮膚炎を患っていた子供たちが、ピーナツアレルギーになっていたのです。また、当時のイギリスで販売されていた複数のピーナツクリームには、精製が不十分でピーナツのタンパク質が含まれているピーナツオイルが使われていました。

つまり荒れた肌に、(アレルギーの原因となるタンパク質を含んだ)ピーナツオイルが塗られたことによって、ピーナツアレルギーを発症していたのです。

 

ラック博士の説を裏付ける実験が、兵庫医科大学で行なわれました。

ネズミの皮膚に「界面活性剤」を塗り、肌荒れのように皮膚バリアが傷んだ状態にして、そこに食物アレルギーの原因物質の一つである卵白を塗ります。卵白は皮膚の微細な隙間から内部に侵入します。これを何回かくり返した後、ネズミに卵白を食べさせると、数分後にアナフィラキシーショックがおこったのです。つまりこのネズミは、皮膚からアレルゲンが侵入することによって、食物アレルギーを発症したのです。

ところがネズミに、あらかじめ卵白を食べさせておくと、皮膚に卵白をすり込んでも、卵白を食べさせても、アレルギーをおこしませんでした。

この実験から、『先に皮膚からタンパク質が侵入するとアレルギーになり、先に腸から侵入するとアレルギーがおきない』ということが明らかになりました。

 

「Tレグ」がつくられると、アレルギーがおきない

先に腸から入ると、なぜアレルギーがおきないのか?

腸にタンパク質が入ると「Tレグ」がつくられるからです。Tレグ(Treg)は「制御性T細胞」の英語名の略で、数ある免疫細胞の中で唯一ブレーキ役を担う免疫細胞です。つまり、Tレグが過剰な免疫反応を抑えて、炎症がおきないようにしているのです。

食物によって含まれるタンパク質の種類が異なるため、タンパク質の種類ごとにそれぞれ専用のTレグが作られます。そうして私たちは、多種多様な食品を食べられるようになるわけです。

したがって、アレルギーがおきやすい食物を避けるよりも、積極的に多くの種類の食物を食べることによって多種多様なTレグをつくっておくことが大事なのです。

ただし、すでに食物アレルギーになっている場合は、アレルギー食品を食べると大変危険ですから勝手に食べてはいけません。またリーキーガットになった腸から侵入する未消化タンパクに対しては、Tレグではなく「抗体」がつくられますから、アレルギー症状が悪化してしまいます。

 

「抗体」ができるとアレルギーになる

(リーキーガットでなければ)先に腸から入ったタンパク質にはTレグがつくられて、免疫が攻撃しなくなります

ところが、先に皮膚や粘膜からタンパク質が侵入すると抗体がつくられて、次にそのタンパク質が侵入したときに激しい免疫反応(アレルギー)がおきるのです。

ですから荒れた手でタンパク質を含む食品を触ると、アレルギーになりやすいわけです。

実際、牡蠣をむく手作業をしている女性たちには牡蠣アレルギーが多いといいます。ソバ打ちの職人が、ソバアレルギーになった例もあります。

去年までは平気だったのに今年から突然、花粉症になってしまったという話もよく聞きます。風邪をひいて鼻や喉の粘膜が荒れたり、あるいはドライアイになったりしているときに花粉が粘膜から侵入することで、花粉に対する抗体が作られてしまうのです。すると、花粉症になってしまうのです。

2004年から発売された「洗顔石けん」によって、小麦アレルギーを発症する人が続出しました。

ある女性は、この石けんを使いはじめて1年ほどたったある日、朝食でパンを食べたところ、顔に突然かゆみや湿疹が現れました。

別の女性は、石けんを使いはじめて1年ほどたってから、夕食にパスタを食べたところ、顔や目、気道の粘膜が急激に腫れ、呼吸困難になり救急搬送されました。

2005年から、このような症状を訴える人が急増し、医療機関で確認された患者数は、最終的に2000人にもなりました。

原因は、小麦に含まれるタンパク質を人工的に分解して生じる加水分解コムギ「グルパール19S」という物質でした。

つまり、石けんという界面活性剤によって皮膚バリアが壊れたところから、小麦のタンパク質が侵入したことで抗体が少しずつ増えていって、小麦を食べたときに小麦アレルギーをおこすようになったのです。

 

このように、皮膚バリアが壊れた箇所からタンパク質が侵入すると、血液中に抗体が作られてアレルギーがおきやすくなるのです。

したがってアレルギーを治すカギは、皮膚や粘膜のバリア機能を強化することなのです。

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