胃弱は胆汁酸で治る!

胃弱の人は、食べると胃がもたれたり痛くなったりムカムカしたりする症状に悩まされています。ひどくなると胃酸が逆流して、胸焼けがしたり、咳やゲップが出るようになります。また、お腹が膨満したり、動悸がしたり、便秘になったりします。

胃が強くなれば、こういった症状に悩まされなくなるでしょう。その秘訣は、「胆汁酸」にあるのです。

 

「油酔い」になるワケ

胃弱の人は、肉や魚など脂が多いものを食べると胃がもたれたり胸焼けしたりするので、肉や魚をあまり食べないようになりがちです。

そのため、タンパク質が不足します。タンパク質が足りないと肝臓の働きが低下して、胆汁の分泌が少なくなります

すると、油脂の消化が悪くなります。油脂は、胆汁によって乳化(水に溶けること)されてから、脂肪分解酵素(リパーゼ)によって消化・吸収されます。ところが胆汁が十分に出ないと、油脂が乳化されません。

2013年の東京工科大学の研究で、リノレン酸が酸化して毒性の強い「アクロレイン」に変化することで「油酔い」がおきることが明らかになりました。

また、十二指腸で油脂が乳化されないと、『胃の働きを抑制する消化管ホルモン』が分泌されます。胃抑制ペプチドをはじめ、セクレチンやGIP、コレシストキニン、ソマトスタチンといった消化管ホルモンが、胃酸の分泌と胃のぜん動を抑えてしまうのです。

つまり、胆汁があまり出ないことによって脂肪が乳化されないために、胃の働きが弱くなるのです。そうして動きが悪くなった状態が「胃アトニー」です。アトニーとは「弛緩」という意味で、いわゆる胃下垂です。

 

胆汁不足で、糖質とタンパク質の消化も悪くなる

肉や魚を食べないでいると、タンパク質が不足します。すると肝機能が低下して胆汁の分泌が少なくなり、油脂が乳化されないことによって胃の働きが弱くなります。

こうして胃の働きが弱くなると、糖質やタンパク質の消化も悪くなります。

糖質が小腸で発酵すると、ガスが発生します。その結果、お腹が膨満したり、胃酸が逆流したりするようになります。

低胃酸によって食べたものが胃で十分に殺菌されないまま腸にいくと、小腸で細菌が増殖してしまう(SIBO)ので、よりガスが発生しやすくなります。小腸で発生したガスは胃に逆流して、胃酸の逆流やゲップの原因となります。

また、逆流するからといって「ガスター10」のような胃酸抑制剤を飲むと、胃での殺菌が不十分になるため、小腸で細菌が増殖してさらにガスが増えるため、かえって胃酸が逆流しやすくなってしまいます

 

一方、タンパク質が小腸で発酵すると、発ガン性のある「アミン」が生成されます。その結果、動悸がおきると考えられます。横田良助医博の研究によると、「アミンの発生によって、心筋梗塞や脳卒中がおきる」ということです。

このように胃弱によって糖質やタンパク質の消化が悪くなり、小腸で発酵することで、様々な症状が引きおこされるのです。そして、食べると具合が悪くなるからといって肉や魚を食べないでいると、さらに胆汁が減って、ますます胃が弱くなってしまうのです。

 

胆汁不足で、ビタミンやミネラルも不足する

胃酸が十分に出ないと、ビタミンやミネラルもあまり吸収できなくなります。

葉酸やビタミンB12をはじめ、ビタミンCやβカロテン、ビタミンDやビタミンEなどといったビタミン、そして鉄や亜鉛、カルシウムやマグネシウム、銅やクロム、セレン、マンガン、バナジウム、コバルトなどといったミネラルをあまり吸収できなくなるのです。

ビタミンB群が不足すると、糖質やタンパク質や脂質の代謝が悪くなるためエネルギー不足になり、活力が低下します。葉酸やビタミンB12が不足すれば、貧血になります。

また、鉄が不足しても貧血になります。貧血になると、食後に血液が胃に集中することで、疲労を感じるようになります。「食後疲労感」は、貧血のサインなのです。

 

亜鉛が不足すると免疫力が低下して、細胞分裂も正常にできなくなるため様々な症状が出ます。

細胞が分裂するときは、染色体(遺伝子)をほどいて、転写したら再び巻き戻します。このとき使われるのがジンクフィンガー(亜鉛の指)で、ジンクフィンガーを付けたり離したりすることで、長い染色体を折りたたむのです。だから亜鉛が足りないと、うまく細胞分裂できません。

そのため亜鉛が足りないと、傷が治りにくい、床ずれができやすい、抜け毛が多い、味覚障害や舌痛、前立腺肥大、免疫力低下による下痢などといった症状が出ます。

また亜鉛が不足していると、些細な刺激でヒスタミンが大量に放出されるため、風邪や鼻炎、喉痛や気管支炎、皮膚炎や蕁麻疹などといった炎症がおきやすくもなります。

 

しかし、ビタミンやミネラルの不足症状でも、ビタミン剤やミネラル剤で改善するとは限りません。胃酸が少ないと、ビタミンやミネラルを吸収できないからです。

大事なことは、胃酸の分泌を促して食物からビタミンやミネラルを吸収できるようにすることです。

 

低胃酸で、冷え性と慢性疲労になる

胃酸があまり出ないとタンパク質だけでなく、糖質も脂質もビタミンもミネラルもすべて消化されにくくなり、栄養失調になります。

栄養が足りないと、筋肉や体脂肪や血球やコレステロールが減少します。

すると体力が低下して、虚弱になります。

女性は、体脂肪が15%以下になると、生理が来なくなります。すると女性ホルモン(エストロゲン)が優位になって、甲状腺ホルモンの働きが低下します。その結果、基礎代謝が低下して「低体温」になります。また、副腎皮質ホルモン(コルチゾール)が低下して「慢性疲労・慢性痛」になります。

つまり、虚弱体質や低体温による冷え性、慢性疲労や慢性痛などを治すには、まず胃の働きを強くして栄養の消化吸収力を高めることが大事なのです。

 

ウルソを飲めば、胃が強くなる

古くから使われてきた牛黄(ゴオウ)や熊の胆(くまのい)は、万病に効くと言われています。

牛黄(ゴオウ)は、牛の胆石です。「日本薬局方」によると、その薬理作用は「血圧降下作用、解熱作用、低酸素性脳障害保護作用、鎮痛作用、鎮静作用、強心作用、利胆作用、鎮痙作用、抗炎症作用、抗血管内凝固作用」などが挙げられていて、適用としては「動悸による不安感の鎮静、暑気当たりに対する苦味清涼、喉の痛みの緩解に粉末にしたものを頓服する」と記載されています。

しかし、牛黄をもった牛は千頭に一頭といわれ、最近では飼育環境が改善されたため、さらに胆石持ちの牛が少なくなり、グラム当たりの価格は金と変わらないほど高価になっています。

熊の胆(くまのい)も、高貴な薬として知られています。中国では古来伝染性の熱病による黄疸、暑期の長期にわたる下痢などの治療に用いられてきました。日本でも、古くからヒグマや二ホンツキノワグマに由来する熊の胆が利用されてきました。しかし、あまりに高価であったため、中国でも日本でも偽物が多かったようです。

中国では、熊を殺して採取していたことから動物愛護や資源保護の問題によって、ワシントン条約に基づいて、中国では1987年に国家重点保護野生薬剤品目の2級に指定されました。最近では、熊の胆採取用の熊を養殖して、成獣の腹部に孔をあけて胆管に管をつなぎ、殺さずに胆汁のみを採取しています。

このように希少で高価な薬として古くから利用されてきた牛黄や熊の胆の主成分=胆汁酸を科学的に合成したものが、「ウルソ(ウルソデオキシコール酸)」です。牛黄や熊の胆の有効成分の解明、それを科学的かつ効率的につくり出すことができる合成方法の確立と製剤化は、すべて日本人の手によって行われました。そして、タナベ胃腸薬の「ウルソ」として販売されています。

 

胆汁酸は、腸で脂肪を乳化させたあと、95%以上が腸から吸収されて、再び肝臓に取り込まれて胆汁の材料となります。つまり「腸肝循環」によって、胆汁酸はリサイクルされているのです。

しかし、老化や病気やタンパク質不足などによって肝機能が低下すると、胆汁の量が減少して、腸肝循環する胆汁酸が不足してしまいます。

そこでウルソを飲めば、胆汁酸の分泌が促されて、脂肪の乳化を助けることができます。すると、胃酸の分泌や胃のぜん動が高まって、肉や魚を食べても胃がもたれたり痛くなったりムカムカしたりしなくなるでしょう。それによって栄養が十分に摂れるようになれば、栄養失調による様々な症状も軽減していくでしょう。

胆汁酸は大腸の動きも活発にするため、便秘にも有効です。

ちなみに、ウルソは「肝臓ガンの予防」にも有効のようです。

2003年9月に、神奈川県立ガンセンター消化器内科の多羅尾和郎氏らが日本癌学会で、「ウルソによって、C型肝炎による肝硬変からの発ガンを予防できる」という研究結果を発表しています。ウルソの服用者と非服用者を長期追跡した結果、肝臓ガンの5年発症率に3倍近い差があったということです。

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