ランニングで体調が悪くなるワケ
ランニングによって、アレルギーやアトピー、腹痛や便秘、高血糖や肥満、うつ病などになることがあります。果たして、その理由とは?
アトピーとうつ病と肥満は、ランニングから始まった
中学に入ってまもなく発症して18年間何をしても治らなかったアトピー性皮膚炎が、たった1ヶ月で治ってしまった男性が、拙著「大豆毒が病気をつくる」のAmazonブックレビューに体験談を書いてくれました。その一部は「野菜を食べるほど体調が悪くなる」に紹介しました。
今年の春から小麦を止めて、その後、野菜や豆類を徹底的にカットしたことで、体重が5ヶ月たらずで11kgも減ったといいます。そして、うつ症状もかなり軽減しました。
以前は、こんな感じだったようです。
食事をすると、猛烈な眠気に襲われる。(高血糖症状)
しばらくすると、何もする気がしなくなる。(低血糖症状)
現在は、いずれの症状もなくなっています。
中学に入った頃の話を詳しくお聞きして、発症の原因が「ランニング」であったことが分かりました。
彼は中学で、テニス部に入りました。練習でかなり走り、テニスもダッシュの連続です。走ると決まって、左の横腹が痛くなったといいます。すべては、ここから始まったのです。
走ると腸内ガスが上がってきて、横行結腸に溜まってきます。右か左の多く溜まった側の横腹が痛くなります。走ると横腹が痛くなるのは、「横行結腸のガス膨満」が原因なのです。
大腸には、120兆個もの細菌が棲息しています。大腸がガスで膨満すると、粘膜が引き伸ばされて、腸内細菌が血液に侵入しやすくなります。たとえ善玉菌でも、血液に侵入すれば「細菌感染」ですから「炎症」がおきます。
また、走ると腸管が揺さぶられることによって、腸温が上がります。腸温が上がると「リーキーガット」になります。リーキーガットとは、小腸の栄養吸収細胞同士の結合がゆるむことです。細胞同士の結合がゆるむことで、未消化なタンパク質が吸収されるようになります。自分のタンパク質ではないものが血液に入ってくると、免疫細胞は「異物が侵入した」と判断して、排除しようとするため「炎症」がおきます。
こうしてガスで膨満した大腸から細菌が侵入し、リーキーガットになった小腸から未消化なタンパク質が吸収されることによって、「炎症」がおきるのです。
炎症がおきると、血液中に「炎症性サイトカイン」が増えます。サイトカインは免疫細胞同士のメッセージ物質で、「炎症をおこせ!」というメッセージが血液によって全身に循環して、すべての免疫細胞に伝わります。その結果、身体のどこかに「炎症」がおきます。
どこに炎症がおきても、だるくなります。
もし皮膚に炎症がおきれば、湿疹が出たり痒くなったりします。
もし気管支に炎症がおきれば、咳や痰が出ます。
もし鼻に炎症がおきれば、鼻が詰まって鼻水やくしゃみが出ます。
もし肩に炎症がおきれば、五十肩になります。
もし膝に炎症がおきれば、膝が痛くなります。
もし脳に炎症がおきれば、頭痛がしたり、集中力や記憶力や判断力が低下したりします。この状態を「ブレインフォグ」といい、「頭に霧がかかったような状態」という意味です。
「炎症をおこせ!」というメッセージを受け取った脳内の免疫細胞(ミクログリア)は、「キヌレニン」という毒素を生成します。キヌレニンによってセロトニンの生成が妨げられて、「うつ病」になります。またキヌレニンは、脳の神経細胞を異常に興奮させて、疲弊させて、死滅させていきます。こうして徐々に、うつ病が重くなっていくのです。
炎症は、血糖値にも影響します。血液中に炎症性サイトカインが増えるほど、「インスリン抵抗性」が高くなるからです。
インスリンは、血液中のブドウ糖が細胞のなかに入るために必要なホルモンです。細胞のなかにブドウ糖が入るドアを開くカギが、インスリンです。インスリンが細胞膜の鍵穴に入ると、ブドウ糖が入るドアが開いて、血液中のブドウ糖が細胞内に入り込むのです。
ところが、細胞膜の鍵穴にインスリンが入りにくくなると、ブドウ糖が入るドアが開かず、ブドウ糖が細胞に入れなくなります。このようにインスリンが細胞膜の鍵穴に入りにくくなった状態を、「インスリン抵抗性」といいます。すると、血液中にはブドウ糖が過剰(高血糖)になり、猛烈な眠気に襲われます。
高血糖のままだと血管の内壁が傷だらけになってしまうので、すい臓が大量にインスリンを分泌して、急いで血糖値を下げようとします。すると血糖値が急激に下がって、「低血糖」になってしまいます。
低血糖になると脳のエネルギーが不足するため、身体は何とかして脳にブドウ糖を送ろうとします。どうするかというと、「筋肉を分解して、タンパク質からブドウ糖をつくる」のです。これを「糖新生」といいます。
糖新生でブドウ糖をつくるには、まず筋肉を分解しなければいけません。そのために必要なのが、アドレナリンです。アドレナリンによって、心臓がバクバクしたり血圧が上がったり、夜眠れなくなったり、不安や恐怖に襲われたりといったことがおきます。
筋肉を分解して得たタンパク質を、肝臓でブドウ糖に変えていきます。そうして、脳に必要なブドウ糖を送るのです。
このような糖新生がくり返して行なわれていたら、筋肉がどんどん減っていきます。
反対に、体脂肪は増えていきます。血糖を下げるために大量に分泌されたインスリンが、脂肪を脂肪組織にどんどん吸収させていくからです。
つまり、炎症によって肥満になるのです。また高血糖も低血糖でも、ベースには炎症があるのです。血液中の炎症性サイトカインが増えるほど、インスリン抵抗性が上がって高血糖になり、大量のインスリンが分泌されることで低血糖になり、肥満になっていくのです。
腸に炎症がおきるだけで、皮膚炎や鼻炎や気管支炎や関節が痛くなったり、頭痛やブレインフォグやうつ病になったり、血糖値が乱高下したり、肥満になったりするのです。
そして、腸に炎症をおこす原因の一つが、ランニングなのです。
新体操で、呼吸困難になり身体中が痒くなった
6歳から新体操を始めた女子高生は、練習後に身体中が痒くなって、喘息のような呼吸困難になっていました。今まで10年以上も様々な治療法や食事を試してきましたが、まったく改善しませんでした。そこで、高校では柔道部に入ることにしました。すると、運動後の発作がいくらか軽減しました。
この症状を聞いてすぐに「運動誘発性アレルギー」だと分かりました。
新体操は、跳んだり跳ねたりが多い競技です。跳んだり跳ねたりすると腸管が揺さぶられることで、ガスが横行結腸に溜まってくるのです。横行結腸がガスで膨満すると、横隔膜が下がりにくくなって息が十分に吸えなくなります。そのため、喘息のような呼吸困難になったのです。
さらに、腸管が揺さぶられることで腸温が上がり、リーキーガットになります。リーキーガットになることで、未消化なタンパク質が吸収されて炎症がおきます。そのため炎症性サイトカインが増えて、皮膚に炎症がおきて痒くなったのです。
柔道に変えて発作が軽くなったのは、新体操ほど激しく腸管が揺さぶられないからです。
治すための食事で悪化していく
「運動」して体調が悪くなると、「食事」を改善して治そうとするものです。
まず、野菜をたくさん食べるようにするのです。
そして、肉は控えて、大豆からタンパク質を摂るようにするのです。
さらに、白米ではなく、玄米や雑穀を食べるようにするのです。
こうして「食物繊維」を多く摂取することで、ますますガスの発生が増えていくのです。
また大豆に含まれる「レクチン」によって、リーキーガットも助長していくのです。
大豆にはタンパク質の消化を妨げる「トリプシン・インヒビター」も含まれていますから、タンパク質不足にもなります。タンパク質が不足すると、筋肉が減って体温が低くなります。体温の大半は、筋肉でつくられているからです。体温が低くなると、免疫力が低下します。
また、タンパク質が不足すると皮膚や粘膜も弱くなって、刺激に過敏になります。
タンパク質は赤血球をつくるためにも必要なので、不足すると貧血になります。赤血球は酸素を運ぶ細胞ですから、貧血になれば酸欠になります。そのため、非常に疲れやすくなります。
さらに大豆には、甲状腺腫を誘発する「ゴイトリン」も含まれています。甲状腺ホルモンは、全身すべての細胞を活性化します。ですから甲状腺ホルモンが不足すると、脳の働きが低下してやる気も記憶力も集中力もなくなり、すべての内臓の働きが低下して消化も吸収も排泄も悪くなり、女性は排卵がおきにくくなり、筋力も低下して非常に疲れやすくなり、体温が低下して免疫力も弱くなります。
つまり甲状腺ホルモンが十分に出ないと、活力が著しく低下してしまうのです。そして、大豆は甲状腺を悪くする一因なのです。
このように、治すために『野菜・豆類・玄米や雑穀』といった食事にしていくことで、ますます病弱になっていくのです。
そして高血糖を抑えるために『糖質を減らす』と、さらに具合が悪くなります。
脳をはじめ、すべての細胞のエネルギーはATP(アデノシン三リン酸)であり、その大半はブドウ糖からつくられます。つまり、細胞の主なエネルギー源はブドウ糖なのです。ブドウ糖を摂らないということは、車にガソリンを入れないのと同じです。あるいは、PCやスマホの電気が足りないのと同じです。エネルギーがなければ、正常に機能するわけありません。
つまり、ブドウ糖を悪いものと考えてごはんを食べないでいると、細胞はエネルギー不足に陥って正常に機能しなくなるのです。
さらに、プロティンで高タンパクの食事をすると、肝臓が悪くなります。
また体調が悪くなると、『ビタミン剤や漢方薬』で治そうとします。
ビタミンは「微量栄養素」ですから、ごく微量あれば足りるものです。微量で十分なものを大量に摂っても、病気が治るはずありません。
例えばビタミンCを大量に摂っても、すぐに尿から排泄されてしまいます。無駄なだけでなく、ビタミンCは鉄の吸収を促すので、肝臓が悪い人は肝臓が悪化します。また鉄の過剰摂取は、発ガンリスクも高めます。ビタミンCを大量に摂っていたポーリング博士も、前立腺ガンで亡くなっています。ビタミンCでガンは防げないのです。
またビタミンB剤は酵母ですから、腸内ガスを増やすことになるかもしれません。
ビタミンAの過剰摂取は、肺ガンのリスクを高めることが分かっています。
ビタミンを大量に摂っても、病気は治らないのです。
また、漢方薬はリーキーガットを助長させるので、飲めば飲むほど腸が悪くなります。
したがって漢方薬で、ますます病弱になっていくのです。
漢方薬の毒性については、「健康食品・中毒百科」内藤裕史著(丸善)に詳しく解説されていますので、「信じられない」という人はぜひ読んでみるとよいでしょう。
治すための食事とは?
では、何を食べればよいのでしょうか? 私がお勧めしているのが『ディフェンシブ・フード』です。ディフェンシブ(defensive)とは「防御的な」という意味で、「胃腸に炎症をおこさず、腸内ガスの発生も少ない食事」です。
ディフェンシブ・フードの基本は、次の3つです。
①白米のごはん
②肉か魚
③味噌汁
この3つをしっかり食べれば、必要な栄養はすべて摂れるのです。
ビタミンやミネラルも、肉や魚や味噌からほとんど摂れます。唯一足りないビタミンCも、ノリやワカメやモズクやヒジキなどといった海藻から摂れますし、キャベツやアボカド、ブロッコリーなどを少し食べれば補えます。
食事をディフェンシブ・フードに変えれば、腸内ガスが減っていき、リーキーガットも徐々に治っていきます。すると、様々な症状が自ずと消えていくのです。
先に紹介した18年アトピーとうつ病が治らなかった男性も、食事をディフェンシブ・フードに変えて、たった1ヶ月で痒みがなくなり、ステロイドが不要になりました。そして、うつ病も急速に回復していて、体重が5ヶ月で11キロも減りました。
また、新体操の練習後に呼吸困難になり全身が痒くなっていた女子高生も、食事をディフェンシブ・フードに変えて、たった1ヶ月で運動しても呼吸困難にならなくなり、2ヵ月後には痒みも出なくなりました。そして、体重が2ヶ月で4キロも減りました。
治すための運動とは?
治すためには、どんな運動をしたらよいでしょうか?
もっとも良いのは、『歩く』ことです。
次のうち、もっとも運動効果が高い(カロリー消費量が多い)のは、どれでしょうか?
A. 10分間走る。
B. 30分間早足で歩く。
C. 1時間ゆっくり歩く。
基本的に、長い時間運動するほどカロリーを多く消費します。セカセカ動くよりも、太極拳のようにゆったりと動くほうが、より長く運動できます。そして、長い時間運動するほうが運動効果は高くなります。ですから正解はCです。
ゆっくり歩けば、呼吸が長く深い呼吸になり、それによって自律神経が安定し、心臓の負担も少なくて済むのです。