過敏性腸症候群を治す食事

過敏性腸症候群の大半がSIBO

「過敏性腸症候群(IBS)」は、腹痛や下痢や便秘をくり返す病状です。

そして、『過敏性腸症候群の85%がSIBO(シーボ)である』ことが分かっています。

SIBOとは、「小腸内細菌増殖症:Small Intestinal Bacterial Overgrowth」のことです。つまり、小腸内に腸内細菌が過剰に増殖してしまった状態です。

大腸には120兆個もの腸内細菌が棲息していて、100種類以上の細菌がそれぞれコロニーを作って群生している様があたかもお花畑のように見えることから、「腸内フローラ」と呼ばれています。

それに対して、正常な小腸には細菌が1万個程度しかいません。

ところが、SIBOになると10万個以上にも増えているのです。それによって過剰に腸内ガスが発生して、お腹がパンパンに膨張します。ガスで腸管が過度に膨張することによって、腹痛や膨満感、便秘などといった症状が現れます。

また、ガスによって腸壁が過度に引き伸ばされることによって、リーキーガットにもなります。リーキーガットとは、腸の栄養を吸収する細胞同士の結合がゆるんで、本来ならば吸収されないもの(例えば、未消化なタンパク質や腸内細菌)が血液に侵入してしまう状態です。

本来タンパク質はアミノ酸に分解されてから吸収されるのに、未消化なまま吸収されてしまうと、自分のタンパク質ではないため、免疫細胞が「異物が侵入した」とみなして排除しようとします。そのため炎症がおきます。この炎症は発熱や痛みを伴わない「くすぶり型」の炎症ですが、血液中に「炎症性サイトカイン」が増えます。

サイトカインは、免疫細胞同士のメッセージ物質です。炎症性サイトカインのメッセージは「炎症をおこせ!」です。ですから炎症性サイトカインが多くなるほど、身体のあちこちに炎症がおきやすくなります。

つまり、SIBOによってリーキーガットになると血液中に炎症性サイトカインが増えて、身体のどこかに炎症がおきやすくなるわけです。

 

腸内ガスを減らす『低FODMAP食』

腸内ガスを発生するのは腸内細菌ですから、腸内細菌が多いほど腸内ガスがたくさん発生します。ですから腸内ガスを減らすには、小腸の腸内細菌を減らすことが必要です。

腸内細菌のエサになるのは、「発酵性・難消化性の糖質」です。それがFODMAP(フォドマップ)といわれる食品群です。名付けたのは、オーストラリア・メルボルン大学のアルフレッド病院の胃腸科部長、モナシュ大学の医学部教授であるピーター・ギブソン博士たちです。ギブソン博士たちは、「FODMAPを控えれば、様々な胃腸症状が改善する」と提唱しています。

FODMAPとは、次の頭文字をまとめた造語です。

 

Fermentable(発酵性)=小腸で消化されず、腸内細菌によって発酵してガスを出す食品。

Oligosaccharides(オリゴ糖)=フラクタン・ガラクトオリゴ糖・フラクトオリゴ糖

Disaccharides(二糖類)=砂糖・乳糖

Monosaccharide(短糖類)=果糖

And

Polyols (人工甘味料)=アセスルファムカリウム・アスパルテーム・キシリトール・マルチトール・ソルビトール・マンニトール・ポリデキストロース・イソマルト・スクラロース

 

低FODMAP食の進化版『ファスト・トラクト・ダイエット』

低FODMAP食をさらに進化させたのが、アメリカの胃腸専門医であるノーマン・ノビラード博士(Norman Robillard, Ph.D.)です。

ノーマン博士は次の5つの成分が腸内ガスを発生させることを証明し、この5つの成分を控えるファスト・トラクト・ダイエット」を提唱しています。ファスト(fast)は「困難」、トラクト(tract)は「消化管(胃腸)」の意味です。

 

①乳糖

②果糖

③難消化性デンプン(レジスタント・スターチ)

④食物繊維

⑤人工甘味料

 

乳糖は、牛乳をはじめチーズやヨーグルトなどに含まれています。

果糖は、果物と果汁のほか、砂糖や果糖ブドウ糖液糖などに含まれています。

難消化性デンプンは、タピオカ(生の芋粉)をはじめ、冷蔵庫で冷やしたご飯に多く含まれています。消化されなければ血糖値は上がりませんが、その代わりにガスが発生するのです。

お米のデンプンは、ブドウ糖の結合の仕方によってアミロースとアミロペクチンに大別されます。アミロースは消化されにくいため、アミロースが多いタイ米などは腸内ガスを多く発生します。一方、アミロペクチンは消化されやすいため、アミロペクチンが多いコシヒカリなどは腸内ガスをほとんど出しません。

低FODMAP食と決定的に異なるのは、食物繊維を加えたことです。食物繊維は消化されないため、腸内細菌が分解します。すると、発酵してガスが発生します

食物繊維は、雑穀や豆類や芋類、野菜や果物、キノコやタケノコなどに多く含まれています。

食物繊維は腸をきれいにすると信じられていますから、腸を良くするためになるべくたくさん食べるように心がけている人が多いでしょう。ところが実は、たくさん食べるほどガスが多く発生して、逆に腸の具合が悪くなってしまうのです。ですから、食物繊維が多い食品は、なるべく少なくするほうがよいのです。

最後は、アセスルファムカリウムやアスパルテーム、スクラロースなどといった人工甘味料です。これらは吸収されないので血糖値は上げませんが、腸内細菌によって発酵してガスを発生します。

ノーマン博士は、『この5つの成分をできるだけ控えることで、過敏性腸症候群やSIBO、胃酸の逆流などといった症状が改善していく』ことを臨床データで証明しています。

 

<腸内ガスを多く発生する食品例>

サツマイモ・里芋・山芋・コンニャク・ゴボウ・レンコン

玉ネギ・ネギ・ラッキョウ・ニンニク・バナナ・リンゴ・イチジク

すべての豆類・大豆製品(豆腐・豆乳・高野豆腐・おから・キナコ・厚揚げ)

玄米・雑穀類・パン・パスタ・ヨーグルト・チーズ

 

SIBOから胃酸の逆流、咳や痰、鼻炎、呼吸困難になる

SIBOになると腹痛や腹部膨満、下痢や便秘などといった症状だけでなく、ほかにも様々な症状が引きおこされます。

例えば、咳や痰、鼻炎や息が吸えないなどといった症状です。なぜSIBOで、呼吸症状が出るのでしょうか?

まず、小腸で発生したガスは、胃に逆流します。

胃のガスは、ゲップで排出されます。(無自覚に、少しずつ漏れ出ることもあります)

つまり胃酸を逆流させるのは、腸内ガスなのです。「胃酸が出すぎるから」ではなく、腸内ガスによって胃酸が逆流するのです。

ガスターのような胃酸を抑える薬を飲むと、食べたものが胃で十分に殺菌されないまま小腸に入ります。そのため腸内細菌が増えて、さらにガスが多く発生するようになります。

胃からガスが排出されるときに、胃酸が食道に逆流します。そのため食道の粘膜がただれてしまいます。これが「逆流性食道炎」で、空咳が出たり胸焼けがしたりするようになります。

このようにガスが腸から胃に、胃から食道に抜けていくときに、腸内細菌も一緒に移動します。そして食道に移動した腸内細菌が、さらに気管支や副鼻腔などに入り込むと、咳や痰、鼻炎や副鼻腔炎などがおきます。これは、ノーマン博士が医学的に証明しています。

また、大腸の横行結腸にガスがたくさん溜まると、息が十分に吸えなくなります。ガスで膨張した横行結腸が、横隔膜が下がるのを妨げるからです。

大腸がガスで膨張すると、便秘にもなります。チューブの中身を出すには、チューブを押しつぶせばよいのです。大腸も同じで、便を出すには大腸を縮めないといけません。ところがガスでパンパンに膨らんでいたら、大腸を縮めることができません。だから便秘になるのです。

 

SIBOになる原因

そもそもSIBOになる原因は何でしょうか?

主な原因は、『食中毒と抗生物質』です。

食中毒によって腸壁が破壊されることで、SIBOになってしまうのです。

もう一つの原因は、抗生物質です。抗生物質を飲むと病原菌だけでなく、善玉菌も死んでしまいます。すると、カンジダ菌(カビ)のような日和見菌が増殖してしまいます。そうしてカンジダ菌が増えてしまうと、体力がかなり低下してしまいます。

カンジダ菌が栄養を横取りしてしまうため常に栄養失調になり、いつもグッタリ疲れている状態になります。そして、頭痛やめまい、イライラ、冷え症、生理痛や膀胱炎、カンジダ性膣炎などといった症状にも悩まされやすくなります。

また、糖質が発酵してアルコールになってしまうこともあります。すると、お酒を飲んでいないのに食後に酔って、眠気やだるさに襲われます。これを「酩酊症(めいていしょう)」といいます。

抗生物質によって、病原菌が耐性を持ってしまうこともあり得ます。耐性菌になると、より毒性が強くなり、胃腸の具合も悪くなります。運悪くクロストリジウムのような超悪玉菌が増えてしまうと、難治性の腸炎(偽膜性大腸炎)になってしまうこともあります。

したがって、抗生物質の濫用はできるだけ避けたほうがよいのです。死に至るような病原菌でない限り、発熱して菌を弱らせて免疫力を高めれば、ほとんど数日で治るのです。

 

過敏性腸症候群に有効な施術

過敏性腸症候群の大半はSIBOで、腸内ガスが過剰に発生することで腹痛や下痢や便秘が生じます。

こういった状態のとき、自律神経は副交感神経が緊張しています。ガスによって胃腸が膨張していると、脳は「食後・満腹」と判断して副交感神経を強く働かせるからです。

したがって、まずは副交感神経の緊張をゆるめることが重要です。

それには、首の「胸鎖乳突筋」をゆるめればよいのです。胸鎖乳突筋の奥に、頚動脈と並んで「迷走神経」が通っています。迷走神経は、胃腸をはじめすべての内臓をコントロールしている副交感神経です。胸鎖乳突筋をゆるめれば、迷走神経の緊張がゆるんで、胃腸の働きが良くなります

胸鎖乳突筋をゆるめるには、大胸筋をゆるめればよいのです。特に、上腕骨に付着する腱の部分をゆるめることが重要です。大胸筋がゆるめば、胸鎖乳突筋が柔らかくなります

 

胸鎖乳突筋がゆるんだら、腹部をオイルマッサージして腸内ガスを抜きます。すると、お腹の痛みや張りがなくなります。ただし、「腸揉み」をしてはいけません。強く押したり揉んだりすると、腸の粘膜の炎症が悪化してしまうからです。

弱い圧で、静かにゆっくりマッサージしてオイルを浸透させていくと、徐々にガスが腸から血液に吸収されて、肺から呼気とともに排出されていきます

 

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