糖尿病の新常識
糖尿病は「ご飯の食べすぎ」が原因ではない!
日本の1960年の一人あたりのコメの年間摂取量は115kgでしたが、1962年の118kgをピークに年々減り続けて、2020年には50.7kgと半分以下になっています。
また摂取カロリーも、終戦直後の1946年に1903kcalだったのが、2015年には1889kcalと少なくなっています。
このように、ご飯の摂取量は半減しカロリー摂取量も減っているにもかかわらず、1945年に3万人だった糖尿病患者数は、2016年に316万6000人(約100倍)となり、予備軍を併せると1000万人(約300倍)にもなっているのです。
つまり糖尿病は、ご飯やカロリーの摂りすぎが原因ではないのです。
糖質制限を続けると早死する!
「糖質を制限すれば、糖尿病を防げる」と考えている人が多いですが、実は違います。
ハーバード大学が25年以上にわたって糖質の摂取量と病気や死亡率との関連を調べた研究で、「消費カロリーの糖質が占める割合が、70%以上あるいは40%未満の人は死亡率が高い」という結果が出ています。つまり、糖質の摂取量が多すぎても少なすぎても死亡率が高くなり、50~65%程度の摂取量の人たちがもっとも死亡率が低かったのです。
T.ファング教授らが糖質制限食と死亡率との関連を、女性で26年間、男性で20年間追跡調査した結果でも、「糖質制限食の人は、男性で1.5倍、女性で1.35倍死亡率が高い」と発表されています。
国立国際医療センターが行なった9つの論文のメタ解析でも、「糖質制限による長期的な効果は認められず、死亡リスクが有意に増加する」と結論づけられています。
また、2021年11月に「キャンサー・サイエンス」という雑誌に報告された論文で、「糖質の摂取量とガンの発症リスクとの関係」が明らかにされました。
45歳から74歳までの日本人の成人およそ9万人を対象として詳しい食事のアンケート調査を行なって、糖質の摂取量と、その後17年間の観察期間中のガンの発症率との関係を調べた結果、「低糖質のグループでは、すべてのガンの種類のガンの発症率が8%増加していた」ということです。
糖質を制限すると、脳が必要とするブドウ糖を、筋肉が分解されてまかなわれます。そのため糖質制限を長く続けると、筋肉が減ってしまいます。筋肉が減れば足腰が弱くなって腰痛や膝痛に悩まされるようになり、首や肩のコリも増大します。そして、ブドウ糖の大半を消費している筋肉が減れば、血糖値が上がりやすくなります。
さらに、運動すると筋肉から分泌される生理活性物質「マイオカイン」には、強力な抗ガン作用があります。ところが筋肉が減ってしまうと、マイオカインの抗ガン作用も十分に得られなくなり、ガンの発症リスクが高まると考えられます。
また糖質制限を続けると、脳も身体も老化が加速してしまいます。
東北大学大学院の都築毅准教授らが、老化促進マウスを「通常食群」「高脂肪食群」「糖質制限食群」に分けて行なった実験では、もっとも長く生きたのが「通常食群」で、次が「高脂肪食群」で、もっとも短命だったのが「糖質制限食群」でした。
この実験から、『糖質制限を長期に行なうと、老化の進行が通常食群に比べて30%速くなり、平均寿命より20~25%短命になる』ということが分かりました。
生後24週(ヒトの60歳に相当)辺りから、皮膚の老化や脱毛がひどくなり、背骨のゆがみも見られました。
また、54週(ヒトの70代後半に相当)に行なった学習記憶力テストでは、通常食群に比べて30%ほど機能低下がみられ、脳の老化を促す過酸化脂質が通常食群に比べて46%も多いことが判明しました。糖質制限によって、身体だけでなく脳も老化してしまうのです。
さらに、糖質制限食によってタンパク質を大量に摂取することによって、細胞の「オートファジー」という働きも抑制されて、異常タンパク質の処理が十分にできなくなることも明らかになりました。オートファジーとは、細胞が不要になったタンパク質を分解して再利用したり、細胞内をキレイに保ったりするしくみのことです。
つまり、糖質の代わりにタンパク質を大量に摂取することでオートファジーが抑制されて、異常タンパク質が細胞内にゴミとして蓄積されていき、細胞の働きが低下して老化が加速してしまうのです。
そもそも糖質制限食を提唱したロバート・アトキンス博士も、ご自身が糖質制限食を続けられず25キロもリバウンドして、72歳で死亡しています。
「おやじダイエット部の奇跡」の著者である桐山秀樹氏も心不全で、61歳で亡くなっています。
「世にも美しいダイエット」の著者である宮本美智子さんも多臓器不全になり、51歳で亡くなっています。
ボディビルで身体を鍛え上げたマッスル北村氏も心不全で、39歳という若さで死亡しています。
このような死亡例をみても、糖質制限食が良いとはいえないでしょう。
小麦を食べると「インスリン抵抗性」が上がりやすい
糖尿病の人が多い県トップ3は、青森県・徳島県・香川県です。
これらの県で共通して多く食べられているのは、「小麦」です。
香川県は、うどんがおいしいことで有名です。駅前には、うどんの名店をタクシーで次々と案内していく「うどんツアー」の看板も出ているほどです。香川県は小麦の一大産地ですから、小麦をおいしく食べる文化が発達したのでしょう。
香川県の隣の徳島県も、ほぼ同じです。これらの県では、うどんの他、パン(とくに菓子パン)も多く食べられています。
青森県は、菓子パンとカップ麺の消費量がもっとも多い県です。
このように糖尿病がもっとも多い県では共通して、パンや麺などの小麦を多く食べているのです。
小麦を毎日食べていると、なぜ糖尿病になりやすいのでしょうか?
その理由は、小麦に含まれている「グルテン」というタンパク質にあります。
グルテンは、腸を「リーキーガット」にするのです。
また、大豆に含まれている「レクチン」も、リーキーガットの大きな原因です。
つまり、『リーキーガットが糖尿病を引き起こす』と考えられるのです。
リーキーガットとは、『腸の栄養を吸収する細胞同士の結合がゆるむ』ことです。すると、結合がゆるんだ箇所から、未消化なタンパク質や腸内細菌などが腸から吸収されて血液に入ってきます。すると血液中の免疫細胞が「異物が侵入した」とみなして、排除しようとします。そのため「慢性炎症」がおきます。この炎症はきわめて小さいので、発熱や痛みなどといった症状はありませんが、血液中に「炎症性サイトカイン」が増えます。
そして炎症性サイトカインが多くなるほど、「インスリン抵抗性」が高くなります。
ちなみに炎症性サイトカインは、歯周病と内臓脂肪でも増えます。いずれの原因であっても、慢性炎症によって血液中の炎症性サイトカインが増えればインスリン抵抗性が高くなり、ブドウ糖が細胞に入りにくくなるのです。その結果、高血糖になるのです。
整理すると、次のようになります。
①小麦(グルテン)や大豆(レクチン)によって、リーキーガットになる。
②腸の慢性炎症によって、血液中に「炎症性サイトカイン」が増える。
③炎症性サイトカインが増えるほど「インスリン抵抗性」が高まり、ブドウ糖が細胞に入りにくくなり高血糖になる。
グルカゴンが増えると「糖尿病」になる!
高血糖になっても、糖尿病になるとは限りません。
1921年にインスリンが発見されて以来、「インスリンの欠乏とインスリン抵抗性が糖尿病を引きおこす」と考えられてきましたが、2011年にその常識が覆されました。
「インスリンがなくても、グルカゴンの働きがなければ糖尿病にならない」という衝撃的な論文が発表されたのです。
グルカゴンは、すい臓から分泌される「血糖値を上げるホルモン」です。グルカゴンによって血糖が増えるから、糖尿病になるというのです。
もちろん、インスリン欠乏が関係ないわけではありません。血糖値を上げるグルカゴンを抑えているのは、インスリンだからです。健康な人は、インスリンによってグルカゴンの過剰な分泌が抑えられているのです。
食後に血糖値が跳ね上がるのは、『インスリンが分泌されるのが遅い』からです。正常ならば食後すぐにインスリンが分泌されますが、食後1時間か2時間くらいしてからようやくインスリンが分泌されるようだと、食後に高血糖になるのです。
そして、インスリンが分泌されると急激に血糖が低下して、低血糖に陥ります。
すると血糖を上げるために、グルカゴンが分泌されることになります。
糖尿病になると、なぜ体重が激減するのか?
糖尿病は「ブドウ糖が過剰」と考えられていますが、実は「ブドウ糖が足りない」のです。血液中には多くても、血糖が細胞に入らないので、細胞のなかはブドウ糖が不足しているのです。そのため、ブドウ糖からエネルギー(ATP)を生成することができません。
すると、ブドウ糖の代わりに脂肪からエネルギー(ATP)を生成します。その結果できるのが、「ケトン体」という脂肪の代謝産物です。そして体脂肪率が10%以下になると、免疫力がかなり低下して、風邪やインフルエンザに罹りやすくなります。
体脂肪が足りなくなると、筋肉を分解してタンパク質からエネルギー(ATP)を生成します。筋肉のタンパク質をエネルギーにしてしまうと、筋肉量が減って筋力が弱くなってしまいます。そして、「クレアチニン」というタンパク質の代謝産物が血液や尿に増えます。
こうして体脂肪や筋肉がどんどん減っていく結果、体重が激減するのです。すると身体を動かすのも大変になり、免疫力も体力も気力も著しく低下してしまいます。
このような体重が急激に減少することによって免疫力・体力・気力などが著しく低下するのを防ぐには、ご飯をしっかり食べればよいのです。
グルカゴンは低血糖になると分泌されるのですから、『ご飯を食べたほうが、グルカゴンの分泌を抑えられる』わけです。
グルカゴンを抑える腸ホルモン
血糖値を下げるには、グルカゴンの分泌を抑えればよいのです。
そのカギとなるのが、「GLP-1」というホルモンです。GLP-1は小腸から分泌されるホルモンで、インスリンの分泌を促すとともに、グルカゴンの分泌を抑制する作用があります。
つまり、GLP-1を増やせばグルカゴンが減って、血糖値が下がるのです。
GLP-1を増やしてグルカゴンの分泌を抑える薬「GLP-1受容体作動薬(リベルサス)」は注射と錠剤があり、糖尿病薬として承認されています。
食事でもGLP-1を増やすことができます。ポイントは、リーキーガットを改善することです。リーキーガットによる小腸の慢性炎症が、GLP-1を減らしてグルカゴンが増えると考えられます。
したがって、小腸の慢性炎症を減らしてGLP-1が増えれば、グルカゴンが抑えられて血糖値が下がるでしょう。
運動すると血糖値を下げられる
運動も、GLP-1の分泌を促します。
運動して骨に圧力がかかると、骨から「オステオカルシン」という骨ホルモンが分泌されます。骨ホルモンは血流によって腸に運ばれて、腸からGLP-1の分泌を促します。
また運動すると、AMPキナーゼという酵素が活性化して、筋肉の細胞にブドウ糖を取り込む「ブドウ糖輸送体(GLUT-4)」が働いて、インスリンがなくてもブドウ糖が細胞に取り込まれます。
定期的に運動を続けると、ブドウ糖輸送体(GLUT-4)が増えていきます。例えば1ヶ月ウォーキングや筋トレを続けると、GLUT-4が1.9倍に増えます。とりわけ筋トレは、運動後もブドウ糖が取り込まれますから、持続的に血糖値を下げることができます。
反対に一番悪いのは、「何時間も座りっぱなしでいる」ことです。座りっぱなしでいると、脚の筋肉がどんどん衰弱していきます。デスクワークでも、なるべくこまめに立ち上がって少し歩くようにするべきでしょう。
マグネシウムで血糖値が下がる
マグネシウムは、次の4つの作用によって糖代謝を高めて、血糖値を下げます。
①インスリンの材料となる(インスリンを増やす)
②細胞の「インスリン感受性」を高める(インスリン抵抗性を下げる)
③細胞内でブドウ糖からエネルギーが生成されるのを助ける(ATPを増やす)
④細胞内へのカルシウム流入を防ぐことによって、グルカゴンの分泌を抑制する。
まず、インスリンを生成するためにマグネシウムが必要です。
次に、細胞のインスリン感受性を高めて、ブドウ糖が細胞に入りやすくします。
そして、細胞内に入ったブドウ糖がエネルギー(ATP)に変わるための補酵素として働くことで、エネルギー(ATP)の生成を助けます。
さらに、グルカゴンの分泌も抑制します。グルカゴンの分泌は、細胞にカルシウムイオンが流入することが引き金になります。ですから細胞へのカルシウム流入を防げば、グルカゴンの分泌を抑えられるわけです。細胞にカルシウムが入るのを防いでいるのが、マグネシウムです。つまりマグネシウムが細胞に十分あれば、グルカゴンの分泌を抑えられるわけです。
こういったいくつもの相乗作用によって、マグネシウムは血糖値を下げるのです。
マグネシウムは、魚貝類や海藻にたくさん含まれています。雑穀や豆類やナッツなどにも多いですが、リーキーガットの原因となるレクチンも含まれていますので、なるべく魚貝類と海藻から摂るほうがいいでしょう。ただし、昆布はヨードが多く甲状腺を悪化させる恐れがあるので、毎日は食べないほうがいいです。
お酢にも、血糖値を下げる効果があります。したがって「ワカメの酢の物」は、血糖値を下げるのに有効な一品でしょう。しかし少量で十分で、大量に摂る必要はありません。
しかし、マグネシウムは腸からあまり吸収されない(吸収率=50%前後)ので、食品だけでは十分に摂取するのが難しいミネラルです。とくに胃酸抑制剤を飲んでいる人や、胃を切除した人は、あまり吸収されません。マグネシウムが吸収されるには、胃酸でイオン化される必要があるからです。
また、マグネシウムのサプリメントはほとんど吸収されない(吸収率=0.4%)ので、下剤としての効果しかありません。マグネシウムは吸湿作用によって腸管内に水分を引き込んで、便の水分量を増やすことで便を柔らかくして排便を促します。ですから下剤としては有益ですが、腸から血液に吸収されないため糖代謝の改善には役立ちません。
このようにマグネシウムは腸からはあまり吸収されないのですが、皮膚からは100%吸収されるのです。
しかし、濃度の高いマグネシウム溶液を塗ると、瞬時に皮膚がガサガサ・ザラザラに荒れてしまいます。
そこで、できるだけ薄い濃度でマグネシウム効果が得られるように作ったのが、『ロイヤルアメイジング・ローション』です。特殊な電解水を使うことによって、微量のマグネシウムでも十分な効果が得られます。また肌が荒れないように、セラミドやヒアルロン酸などの保湿剤も加えてあります。
『ロイヤルアメイジング・ローション』をすり込むと、コリや痛みがなくなるだけでなく、糖代謝を高めることもできるのです。糖代謝を改善するための目安量は、1ヶ月に2~4本です。朝晩2回、足腰やお腹などなるべく広範囲にすり込むとよいでしょう。
▶論文:Long in the shade, glucagons re-occupies centre court. Henquin, 2011