腸内ガスが腹痛を引きおこす
病院で異常が見つからない腹痛
腹痛があって、医者に診てもらっても「特に異常がない」と言われることがあります。
血液検査が正常で、大腸や胃の内視鏡検査をしても異常がないと、膀胱や子宮や卵巣などが疑われて泌尿器科や婦人科に回されて、そこでも腹痛の原因が見つからないと、心療内科に行くように勧められる、というパターンが多いのではないでしょうか。
そんな原因不明の腹痛は、「腸内ガス」が原因であることが多いのです。
40代の美容師の腹痛
彼は2年前に、お子さんの病気によるストレスで不眠になり、突発性難聴になりました。
その翌年に直腸ポリープを切除し、その5ヵ月後に39℃の発熱を伴う肛門痛と精巣痛がおきました。病院で「左精索静脈瘤」と診断されて、静脈瘤をつぶす手術を受けました。
ところが腹痛は治まらず、医師に訴えても「静脈瘤はなくしたから、ほかで診てもらってください」と言われました。
それから半年後に左の腰から太もも裏に激痛が走り、股間周囲に帯状疱疹(?)が現れました。抗ウイルス薬を飲んでも効かず、動悸がしたので中止して、自然に治るのを待ちました。
ストレートネックによる自律神経失調症と診断されたこともあり、「一体何が原因で、腹痛と膨満感が続いているのか分からない」と言って相談に来られました。
私は最初、「前立腺肥大が原因かもしれない」と思いましたが、血液検査のデータをみると異常はなく、前立腺のマーカー(PSA)も正常でした。そこで腹部を触ってみると、驚くほど臍の周囲が固くなっていました。
臍の周囲は、小腸です。つまり、小腸がガスでパンパンに膨脹していたのです。
彼は健康のために、玄米や雑穀を中心に、野菜や豆をたくさん食べてきたのです。それによってSIBO(小腸内細菌増殖症)になってしまった、と考えられます。
まず首の胸鎖乳突筋(迷走神経)をゆるめてから、オイルマッサージでガス抜きをしたら、腹痛と膨満感がウソのように消えました。「ここ何年か、こんなに楽になったことがない」と言われました。
50代の英語教師の腹痛
彼女は、今年(2022年)2月に3回目のコロナワクチンを打ってから間もなく、膀胱炎のような症状が出て、抗生物質を処方されました。それで治まったのも束の間、すぐに症状が再発したので、また別の抗生物質を処方されました。ところが何日たっても痛みが取れないので、大腸の内視鏡検査を受けました。しかし異常は見つからず、婦人科に行くように勧められて、「卵巣にのう胞とのう腫がある」と診断されて卵巣を切除しました。
ところが腹痛は治まらず、心療内科に行くように勧められました。しかし、精神に原因があるとは思えないので、友人に相談したら「ペインクリニックに行ってみたらどうか」と言われました。そしてペインクリニックのベテラン医師を指名して受診したら、私のところに行くように勧められて来られました。
彼女はかつてUCLAに留学していた才女で、中学1年生から高校3年生まで英語の授業を数多く受け持っていて、病状の経緯も明瞭に話せて、精神に問題がないことは明らかでした。
横になって腹部を触ってみたら、臍の周囲と右の悸肋部が非常に固くなっていました。
つまり、小腸と大腸の右上部がガスでパンパンに膨脹していたのです。
おそらくワクチンによって体内で生成されたスパイクタンパクが、子宮や卵巣に集まって炎症をおこしたことで膀胱炎のような症状がでて、それを膀胱炎と診断されて抗生物質を飲んだことによってSIBO(小腸内細菌増殖症)になったのではないか、と思われました。
まず首の胸鎖乳突筋(迷走神経)をゆるめてから、オイルマッサージでガス抜きをしたら、腹痛がなくなりました。
何軒ものクリニックや大学病院で色々な検査を受けたり、卵巣を切除する手術まで受けたりしても治らなかったのに、わずか30分ほどのオイルマッサージで痛みがなくなって唖然としていました。
わずか1ヵ月足らずで完治して、9月から無事に職場に復帰できました。
30年続いた腹痛
70歳の男性は、「30年も原因不明の腹痛に悩まされている」と言って相談に来られました。数ヵ月後に大腸の手術を受ける予定だ、ということです。
お腹を触ってみると、お腹全体がパンパンに膨れていました。明らかにガスで膨満していました。
どんな食事をされているのかお聞きしたら、毎晩、晩酌しながら『豆腐一丁・煮豆・根菜の煮物』が定番で、それに煮魚などの日替わりが一品、ということでした。
豆腐も煮豆も根菜もガスを大量に発生するので、それらを極力食べないようにアドバイスしました。すると徐々に腹痛がおきなくなっていき、結局、大腸の手術を受けずに済みました。
腸内ガスを発生する5つの成分
これらの例から、『過剰な腸内ガスによって腹痛がおきる』ことが分かったと思います。
しかし、病院で「腸内ガスが原因」と診断されることはないでしょう。ガスは内視鏡で映らないので、胃腸に炎症や潰瘍や出血がなければ、原因不明となってしまうのです。
ところがガスで腸が膨脹すれば、お腹が痛くなるのです。腹部膨満による腹痛は、腸内ガスが原因なのです。走っていると横腹が痛くなるのも、腸内ガスが原因です。
なぜ、腸内ガスが発生するのでしょうか?
一つは、「抗生物質」が原因です。抗生物質を飲むと、病原菌のほかに善玉菌も死んでしまいます。すると、カンジダのような日和見菌が増殖してしまうのです。
カンジダはカビの一種で、小腸で増殖すると腸内ガスを発生します。
もう一つの原因は、「ガスを発生する食品」の摂りすぎです。
アメリカの胃腸専門医であるノーマン・ロビラード博士(Norman Robillard, Ph.D.)が、ガスを発生する5つの食品成分を明らかにしています。
①乳糖
②果糖
③難消化性デンプン(レジスタント・スターチ)
④食物繊維
⑤人工甘味料
ヨーグルトや牛乳やチーズには、「乳糖」が含まれています。
果物や果汁をはじめ、野菜ジュースや砂糖には、「果糖」が含まれています。
タピオカやタイ米には、「難消化性デンプン」が含まれています。
豆類や芋類、玄米や雑穀、ゴボウやレンコンやコンニャク、キノコやタケノコなどには、「食物繊維」がたくさん含まれています。
パルスイートや糖質オフを謳った清涼飲料水やダイエット商品などには、「人工甘味料」が含まれています。
これらの成分はすべて小腸で消化されません。消化とは、消化酵素によって分解されることです。消化できないものは、細菌が分解します。すると、発酵してガスが出るのです。
消化できないもの(細菌のエサ)を多く食べ続けていると、腸内細菌が増殖していき、細菌が多くなるほどガスも多く発生します。ガスを減らすには、腸内細菌を減らす必要があります。それには、「小腸で消化できないもの」をなるべく減らすことです。