心身症の原因は「乳酸菌」だった!
うつ病をはじめ心身症の多くは、IBS(過敏性腸症候群)から発症します。
したがって心身症を治す秘訣は、腸を健全にすることにあるのです。
そして腸内環境は、乳酸菌によって悪化するのです!
心身症はIBSから発症する
心身症は、精神的ストレスが原因でおきると考えられていますが、実は胃腸の慢性不良からおきることがほとんどです。つまり、胃腸障害から心身症がおきるのです。
慢性的な胃腸障害の大半は、腹痛と便秘と下痢をくり返すIBS(過敏性腸症候群)です。
IBSの人は、いつもお腹がガスで膨満しています。とくに、みぞおちあたりが膨満して、胃の痛みやむかつき、胃酸の逆流、ゲップなどに悩まされています。こういった症状から「胃が悪い」と考えますが、胃を検査しても異常が見つかず、精神的な原因によるものと診断されることが多いのです。
みぞおちあたりの痛みやむかつきは、胃が悪いのではなく、横行結腸が膨満しているのです。つまり、横行結腸にガスが大量にたまっているのです。
ガスを発生するのは、腸内細菌です。
そう聞くと、『カンジダ菌のような「悪玉菌」が増えているのだから、乳酸菌やビフィズス菌などの「善玉菌」を増やして悪玉菌を減らそう』と考えるのが普通でしょう。
ところが、大量にガスを発生しているのは、乳酸菌なのです!
胃腸のなかに乳酸菌が増えすぎているために、食事をするたびに異常発酵して、ガスが大量に発生するのです。
そして、乳酸菌は乳酸を産生して腸内を酸性に傾けます。そのため、胃腸の機能が低下します。
さらに乳酸が吸収されると、血液が酸性化します。これを「乳酸アシドーシス」といいます。乳酸アシドーシスになると、頭がボーッとして集中力や記憶力や思考力が著しく低下し、極度の疲労感や虚脱感を感じるようになります。これが「ブレイン・フォグ」といわれる状態です。まさに、脳に霧がかかったような状態になるわけです。
乳酸菌が分泌した乳酸によって、血液が酸性(乳酸アシドーシス)になり、その結果、ブレイン・フォグになるのです。[1] つまり原因は、乳酸菌ということです。
そして、ブレイン・フォグから、偏頭痛やPMS(生理前症候群)、うつ病や機能性ディスペプシア(胃の機能不全)などといった症状が派生してくるのです。
偏頭痛の根源は「腸内細菌」
偏頭痛は、10代の初めの頃に発症することが多く、こめかみが心臓の鼓動に合わせてズキンズキンと脈打って頭が痛くなり、しばらくすると吐き気がしてきて、何も食べたり飲んだりできなくなります。大抵は半日くらいで治まりますが、なかには数日寝込んでしまう人もいます。このような偏頭痛を、毎週くり返している人も少なくありません。
また偏頭痛の人は、痛くないときでも痛みや刺激に過敏で、大きな音やまぶしい光、強い匂いによって具合が悪くなります。運動や入浴、マッサージなどでも偏頭痛がおきやすいので、どんなに首や肩が凝っていてもマッサージすると偏頭痛を誘発させてしまいます。
食事も、血流を良くする作用があるものを摂取すると偏頭痛がおきやすくなります。
偏頭痛は、なぜおきるのでしょうか?
偏頭痛の人たちは、お腹がいつも張っています。つまり、ガスが過剰に発生しているのです。
大腸のなかには、およそ1000兆個もの腸内細菌が棲息しています。人間の細胞数がおよそ38兆個といわれていますから、いかに多いか分かるでしょう。細菌だらけの大腸が膨満すると、腸内細菌が血液に侵入します。
血液に侵入した細菌は免疫細胞に殺されますが、その際に軽度な炎症がおきて「炎症性サイトカイン」がつくられます。炎症性サイトカインは、「炎症をおこせ!」という免疫細胞へのメッセージ物質です。
この炎症性サイトカインが全身に循環して、すべての免疫細胞に「炎症をおこせ!」というメッセージが伝えられます。炎症性サイトカインは、脳にも流入します。すると脳内の免疫細胞(ミクログリア)が活性化して、「キヌレニン」という神経毒が生成されます。
すると、精神を安定させる神経伝達物質であるセロトニンの生成が妨げられて、脳内のセロトニンが不足します。
セロトニンが減ると、三叉神経からCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)やプロスタグランジンといった炎症性物質が放出されます。そして、三叉神経から放出される炎症性物質によって脳の血管が拡張して、偏頭痛がおきるのです。
つまり根本は、「腸内ガス」によって腸内細菌が血液に侵入することにあるのです。腸内細菌の侵入によっておきた「炎症」が、脳に飛び火したようなものです。
したがって、偏頭痛を防ぐには腸内ガスを減らせばよいわけで、それには腸内細菌を減らせばよいのです。
偏頭痛からうつ病に
偏頭痛の原因は、神経毒「キヌレニン」によってセロトニンの生成が妨げられることで、三叉神経から炎症性物質が放出されることにあるのです。
キヌレニンによって脳の神経細胞が破壊されていくと、やがてセロトニンがさらに減少して、うつ病になります。
つまり、偏頭痛からうつ病になっていくのです。
ということは、うつ病の根源も「腸内ガス」によって大腸が膨満することにあるわけで、ガスを発生するのは腸内細菌です。
ノルウェーのヘドマーク大学の研究で、「アリスティペス菌という乳酸菌が、うつ病に関連している」ことが明らかになっています。[2] アリスティペス菌は腸内を酸性にして胃腸の動きを止めるので、便秘の原因菌として知られています。このアリスティペス菌は食物繊維をエサにして増えるので、豆や野菜や果物を食べるほど増えます。
つまり、菜食で増えた乳酸菌がガスを発生して腸が膨満し、腸内細菌が血液に侵入して、腸で増えた炎症性サイトカインによって脳の免疫が暴走するのです。その結果、セロトニンが減少して、うつ病になるのです。
偏頭痛やうつ病の原因は「乳酸菌」
偏頭痛やうつ病を引きおこす原因となる腸内細菌は、IBSと同じく「乳酸菌」です。
2021年、イタリアで、「IBSの患者に対して20週間、乳酸菌や食物繊維を抑えた食事法を行なったところ、リーキーガットの改善とともに、対人感受性、抑うつ、不安、敵意、恐怖、自殺願望などすべての心理的問題が軽減した」と報告されています。[3]
乳酸菌は、豆や野菜や果物をたくさん食べるほど増えます。豆や野菜や果物に含まれる食物繊維が、乳酸菌のエサになるからです。
つまり、菜食が乳酸菌を増やして、IBSや偏頭痛やうつ病などを引きおこすのです。
自閉症の子供には「乳酸菌」が多い
母親がIBSだと、自閉症児が生まれやすくなります。[4]
そして自閉症児の腸内には、乳酸桿菌やプロピオン酸が多いことが分かっています。
プロピオン酸は、大腸で食物繊維が腸内細菌によって発酵してつくられる短鎖脂肪酸の一種です。プロピオン酸は血液脳関門を通過して脳内に入り、神経の異常や脳の炎症を引きおこし、神経の発達を阻害します。
2013年に、カリフォルニア工科大学のイレイン・シャオ博士が世界的科学雑誌「セル」に、『自閉症患者の血液中に「4EPS」という毒素が増えている』と発表しています。
シャオ博士は、コミュニケーション能力の低いマウスの血液中に、4EPS(4-ethylphenylphate)という毒素が80倍にも増えていることを発見し、試しに正常なマウスに4EPSを注射したらコミュニケーション能力が著しく低下しました。
そして人でも、自閉症患者の血液中には、4EPSが健常者の46倍も多いと発表されています。この4EPSも、腸内細菌がつくり出す毒素です。
プロピオン酸説と4EPS説のいずれでも、自閉症の根源が「腸」にあることは明らかです。そして腸内環境を悪化させている原因は、「乳酸菌」なのです。
乳酸菌を増やすのは、野菜と乳製品
乳酸菌は食物繊維をエサにして増えますから、豆や野菜や果物、キノコなどをたくさん食べるほど増殖します。
もう一つは、乳製品です。乳製品に含まれる「乳糖」を、ほとんどの日本人は消化できません。乳糖分解酵素が出ないからです。日本人の大半は「乳糖不耐症」なのです。
乳酸菌は、消化できない乳糖をエサにして増殖します。つまり、牛乳やチーズ、ヨーグルト、アイスクリームなどを摂るほど、乳酸菌が増殖するのです。
今まで「善玉菌」と言われてきた乳酸菌が、実はIBSをはじめ、偏頭痛やうつ病や自閉症などを引きおこす原因であることが判明しているのです。
そして、乳酸菌は豆や野菜や果物や乳製品などの摂取で増殖するのです。
[1] Rao SSC, et al. Clin Transl Gastroenterol. 2018;9(6):162.
[2] Naseribafrouei A, et al. Neurogastroenterol Motil. 2014;26:1155-62.
[3] Prospero L, et al. Nutrients. 2021;13(7):2469.
[4] Abdelli LS, et al. Sci Rep. 2019;9(1):8824.