高血圧を治す秘訣
血圧が高くなる原因はいくつかあって、原因によって「何をすれば下がるのか?」が異なります。まずは、「自分の原因」を知ることが大事です。
血圧と自律神経
血圧は、交感神経が緊張すれば高くなり、副交感神経が優位になれば下がります。
朝は交感神経が緊張することで目が覚めて起きられるので、血圧は高くて当然です。
反対に、夜は副交感神経が優位になって血管が拡張するので、血圧が下がります。
したがって、起床後に最高血圧が140~150くらいあっても、しばらく身体を動かしているうちに120~130くらいに下がるのが普通です。
寝室が寒いと交感神経がより強く緊張するので、血圧も高くなります。また気圧が高いほど交感神経が緊張するので、血圧が高くなります。
つまり、高気圧で寒い日の朝は血圧が高くなって当たり前で、病気ではないのです。
問題なのは、いつ測っても最高血圧が160以上ある場合、あるいは最低血圧が100以上ある場合です。放置しておくと心臓や腎臓が悪くなっていきますし、脳卒中や大動脈解離のリスクも高まります。
交感神経は高気圧や寒冷のほか、痛みや精神的な緊張・不安・恐怖でも緊張します。
交感神経の緊張による高血圧に適した降圧剤は、βブロッカーとカルシウム拮抗薬です。
βブロッカーは、アドレナリンが心臓のβ受容体に結合するのを阻害する薬です。即効性はありますが、毎日飲み続けるのは危険です。
カルシウム拮抗薬は、カルシウムイオンが血管の筋肉に流入するのを阻害する薬です。血管の筋肉にカルシウムイオンが流入すると、血管が収縮して血圧が上がります。それを防ぐのが、カルシウム拮抗薬です。もし毎日飲み続けるのなら、カルシウム拮抗薬のほうが安全でしょう。
あるいは、マグネシウムを補給するのも有効です。マグネシウムは『天然のカルシウム拮抗薬』と言われるように、カルシウムと正反対の働きをします。つまり、血管を弛緩させて血圧を下げるのです。
ただし、マグネシウムをサプリメントで飲んでも、あまり吸収されません。
しかし、皮膚からは100%吸収されます。肌が荒れにくいマグネシウム補給用の「ロイヤルアメイジング・ローション」をすり込めば、血管がゆるんで血圧が下がるでしょう。
血圧と塩分
血圧は、血液量が多くなるほど高くなります。多くの液体をポンプしなければいけないので、心臓がポンプ力を上げるからです。
血液量を決めるのが、ナトリウムです。ナトリウムが多くなると、水を増やして同じ塩濃度にするわけです。
したがって塩(塩化ナトリウム)を多く摂るほど、血液量が増えて血圧が高くなるのです。これは自然塩でも同じで、何十種類のミネラルが入っている天然塩でもナトリウムが多ければ血液量が増えるので、たくさん摂れば血圧が上がります。
塩分量が多い代表例が、ラーメンです。ラーメン1杯のスープには、およそ6gもの塩分が含まれています。もし全部飲んでしまうと、その塩分が身体から完全に排泄されるのに、約1週間もかかります。つまり、たった1杯のラーメンのスープで、1週間もむくんだままになるのです。
塩分過剰による高血圧は20%くらいですが、塩分は1日10gまでに抑えることです。しかし6g以下に減らすと気力や活力が萎えますので、ある程度は摂る必要があります。
塩分過剰による高血圧に適した降圧剤は、利尿剤です。
血液中のナトリウムを適正に保つ働きをしているのが、腎臓と副腎です。
副腎から分泌されるアルドステロンというホルモンは、腎臓の尿細管に作用してナトリウムと水の再吸収を促します。つまり、腎臓の糸球体でろ過した原尿から、水とナトリウムを血液に戻すのです。原尿は1日150~180リットルほどつくられますが、その99%は尿細管から再吸収されて血液に戻るのです。
もしアルドステロンが過剰に分泌されると、水とナトリウムの再吸収が促進されるので、血液量が増えます。その結果、血圧が高くなります。
この場合カリウムが不足して、筋力が低下したり、胃腸のぜん動が弱くなって便秘になったりします。さらにカリウムが減少すると、筋肉が痙攣したりマヒして動かなくなったりします。また胃腸の動きが悪くなって、腸閉塞になりやすくなります。
なぜ、このような「低カリウム・高ナトリウム」になるのでしょうか?
それは、腎臓の尿細管でナトリウムとカリウムが交換されるからです。原尿からナトリウムが血液に戻るときに、血液中のカリウムが尿に排泄されるのです。ですから再吸収されるナトリウムが多いほど、カリウムが排泄されてしまうのです。
したがってアルドステロンが過剰に分泌されると、尿細管からナトリウムが多く再吸収されて、カリウムがどんどん失われていくのです。そのため血液量が増えて血圧が上がり、カリウムが不足することで筋力が低下し、胃腸の動きも弱くなるのです。
副腎に良性腫瘍ができると、アルドステロンが常に過剰に分泌されるので、低カリウム・高ナトリウムになります。これが「原発性アルドステロン症」で、高血圧の原因の5~10%を占めると言われています。
また、副腎には異常がないのにアルドステロン過剰と同じ症状が出るものに、「偽アルドステロン症」があります。この原因は、甘草の甘味成分である「グリチルリチン酸」です。グリチルリチン酸は、アルドステロンと同様の働きをするからです。
そのため、甘草は摂りすぎに気をつけないといけません。1日あたり甘草で1g、グリチルリチン酸で200mgを超えないように注意する必要があります。甘草やグリチルリチン酸は漢方薬や健康食品だけでなくお菓子や化粧品にも含まれていますから、それらを総合して1日の許容量をオーバーしないように注意しましょう。
血液量が増加したことによる高血圧には、カリウムを摂取することが有効です。「やさしお」は自然塩と塩化カリウムを半々にブレンドした塩で、高血圧の予防には最適です。
血圧と腎機能
腎臓の血流量が減少すると、血圧を上げる「レニン」というホルモンが分泌されます。
レニンは、血液中のアンジオテンシンを活性化して、活性化したアンジオテンシンは肺でさらに活性化されてアンジオテンシンⅡになります。このアンジオテンシンⅡが、心臓のポンプ力を強めて血圧を高めます。
ですから腎機能が低下した人は、常に腎臓からレニンが分泌されて、血圧が高くなるのです。
レニンによって血圧が上がる場合に適した降圧剤は、ARB(アンジオテンシン受容体ブロッカー)です。
ちなみに、腎機能が低下していなくても、腎臓の血流量が減少してレニンが分泌されることがあります。それは「痛み止め」です。消炎鎮痛剤は腎臓の糸球体に入る血管を収縮させるので、腎臓の血流量が減少してレニンが分泌されて血圧が上がるのです。
腎機能が低下する原因
腎機能が低下する原因は何でしょうか?
昔は風邪(溶連菌感染)からおきる「糸球体腎炎」が一番多かったですが、現在もっとも多いのは「糖尿病」です。高血糖になると、血液中の糖がタンパク質と反応して老化物質のAGEsが生成されて、AGEsが腎臓の糸球体を壊していくのです。ただし、糸球体の破壊が進んでいくのはヘモグロビンA1cが8.0を超えてからですから、7%台以下に抑えていれば腎機能の低下を防げます。
また、「膀胱炎」や「尿路結石」なども腎機能を低下させる原因になります。
「前立腺肥大」も、腎機能を低下させる原因になります。前立腺の肥大が進むと、排尿時に尿道が圧迫されて、尿が逆流します。尿が膀胱から尿管→腎臓と逆流すると、腎臓が大きなダメージを受けて機能が低下してしまうのです。
弱い女性ホルモンであるエクオールは、前立腺肥大の予防に有効です。
ほかにも、腎機能が低下する意外な原因があります。
「ゲルマニウム」と「漢方薬」です。
ゲルマニウムには、腎臓毒性があります。
実際に、ゲルマニウムが入った食品を摂り続けて、わずか数ヶ月で腎不全になって死亡した例がたくさん報告されています。ゲルマニウム中毒の初期症状は、全身倦怠感、吐き気、嘔吐、食欲不振、四肢のしびれで、血液検査では血清クレアチニンと尿素窒素と尿酸が増加します。しかし、タンパク尿や血尿、むくみや乏尿はみられません。
貧血も全例にみられ、摂取を止めても正常に戻るのに2年もかかるといいます。
また、筋力低下(筋萎縮・筋肉痛)、手足の感覚障害から始まる末梢神経障害、脳神経障害(顔面の感覚低下・口蓋垂や舌の変位・舌の萎縮・構音障害・嚥下障害・しわがれ声・動眼神経障害・三叉神経障害・迷走神経障害・舌下神経障害・呼吸筋マヒ・四肢マヒなど)、起立性低血圧、発汗異常、心機能障害、肝機能障害などといった多岐にわたる弊害が報告されています。
体内に吸収されたゲルマニウムは、骨格筋に正常の10万倍近く、心臓に2,600倍以上、脾臓に10,800倍以上も蓄積し、毛髪や爪にも多く蓄積します。
「朝鮮人参は、土壌中のゲルマニウムを濃縮する」といわれるように、朝鮮人参(高麗人参)にはゲルマニウムが多く含まれています。
漢方薬にも腎機能を著しく低下させて、「漢方薬腎症」を引きおこすものがあります。
代表的なのは「アリストロキン酸」で、ウマノスズクサ属植物に含まれている腎毒性物質で、強力な発ガン性物質です。漢防已、関木通、広防已、青木香、細辛といった生薬に含まれています。
アリストロキン酸が含まれた漢方薬によって腎機能障害(間質性腎炎)を発症するまでの平均服用期間は約13ヶ月で、服用を止めても腎機能は回復せず急速に悪化していきます。
また、アリストロキン酸を含まない漢方薬でも、漢方薬腎症を発症した例も報告されています。漢方薬は、実は危険なのです。
低血糖になると、高血圧になる
血液中のブドウ糖が不足すると、アドレナリンやグルカゴンといったホルモンが分泌されて血糖を増やします。ブドウ糖を脳に送るためです。
脳は、毎日およそ100gのブドウ糖を消費しています。とくに何もしていなくても(眠っていても)脳は大量のブドウ糖を消費し続けているのです。
脳のエネルギー源であるブドウ糖が食事から十分に摂れないと、筋肉が分解されて、肝臓がタンパク質からブドウ糖をつくり出して脳に送ります。これを「糖新生」といいます。
筋肉を分解するためにアドレナリンが分泌されるので、血圧が上がります。
ですから夕飯でご飯を少ししか食べないと、夜寝ている間に低血糖になって糖新生が行なわれるため、アドレナリンによって目が覚めて睡眠不足になり、血圧も高くなるのです。
糖新生をくり返していると、筋肉量が減っていきます。とくに脚の筋肉が減りますから足腰が弱くなり、腰痛や膝痛に悩まされるようになります。すると腰や膝の痛みによって交感神経が緊張して、血圧も高くなります。
また、筋肉が減るほど体温が低くなるので、冷えやすくなります。そして、冷えれば交感神経が緊張しますから、血圧が高くなります。
つまり、ご飯を十分に食べないと、糖新生によってアドレナリンが分泌されて、さらに筋肉量が減って痛みや冷えによってもアドレナリンが分泌されるので、血圧が高くなってしまうのです。
動悸は、横行結腸の膨満によっておきる
動悸は心臓の病気ではなく、ただ心臓の拍動を感じているだけです。
しかし、通常は心臓の動きを感じることはありません。それを、感じるのはなぜでしょうか?
それは、心臓の周囲が硬いからです。硬いものは、音や振動をよく伝えるでしょう。
心臓の周囲で硬くなるものは、何でしょうか?
それは「横隔膜」です。横行結腸がガスで膨満すると横隔膜が押し上げられて、息が吸いにくくなり、心臓も圧迫されます。
太鼓の皮をピーンと張るといい音が出るように、横隔膜も突っ張って硬くなると、心臓の拍動がよく伝わって動悸がするのです。
ときには腸内ガスで押し上げられた横隔膜が心臓を圧迫することで、狭心症と似たような痛みがおきることもあります。これは「ロエムヘルド症候群」と呼ばれる症状です。
さらに、寝ている間に胃腸のガスが横隔膜を押し上げて、心臓を止めてしまうこともあります。いわゆる「ポックリ病」です。
腸内ガスを発生するのは、次の5つです。
- 乳糖
- 果糖
- 難消化性デンプン(レジスタント・スターチ)
- 食物繊維
- 人工甘味料
食物繊維は「良いと思ってたくさん食べるようにしている」人が多いですが、実はたくさん摂るほど腸内ガスが多く発生して、腹部膨満や腹痛、下痢や便秘などになるのです。
そして、ガスで膨満した横行結腸が横隔膜を押し上げて、心臓を圧迫するのです。
したがって、食物繊維が多い野菜や豆、芋、キノコ、山菜、雑穀などはあまり多く食べないほうがいいのです。
最低血圧が高いのは?
最低血圧が高いのは、血管壁が硬いことを示しています。
血管壁を硬くするのは、LDLコレステロールではありません。
元ミュンヘン大学医学部教授の心臓血管外科医であるワルター・ハルテンバッハ博士は、
「動脈硬化をおこした血管に閉塞しているコレステロールはわずか0.5%(最大でも1%)で、閉塞物質の大半(95%)を占めているのはカルシウムである」と明言しています。
つまり、カルシウムが沈着することで血管が硬くなるのです。
カルシウムが血管に沈着していく主な原因は、次の4つです。
- カルシウムまたはビタミンDの過剰摂取
- 副甲状腺から分泌されるPTH(パラソルモン)の過剰
- 腫瘍から分泌されるPTH様ペプチド
- クッシング症候群
カルシウムやビタミンDを過剰に摂取することによって血中のカルシウム濃度が高くなり、血管に蓄積していきます。
とくに高齢になると、骨量を増やそうとしてカルシウムを多く摂ろうとする人が多いですが、カルシウムを摂っても骨が増えるわけではありません。過剰なカルシウムは尿から排泄するために腎臓に蓄積していき、尿路結石の原因になります。あるいは関節に蓄積して、痛風のような激しい痛みを引きおこす原因にもなりますし、血管に蓄積していけば血管が硬くなって血流が悪くなります。ですから、カルシウムをたくさん摂るのは危険です。
また、『糖質制限+高タンパク』の食事も危険です。
過剰なタンパク質がカルシウムと結合して、尿からカルシウムが排泄されていくからです。そのため尿路結石ができやすくなり、腎機能が低下していきます。そして骨量が減っていき、骨粗鬆症のリスクも高まります。
ビタミンDは大人で1日1000IU~4000IUが適量で、それより多く摂り続けると血中のカルシウム濃度が高くなる恐れがあります。
また、副甲状腺の異常によってPTHというホルモンが過剰に分泌されると、骨からカルシウムが溶け出して血中のカルシウム濃度が高くなり、血管や腎臓に蓄積していきます。
乳ガンや肺ガン、腎臓ガンや子宮ガン、膀胱ガンなどの腫瘍からPTHと似たような働きをするタンパク質が分泌されることでも、骨からカルシウムが溶け出して血中カルシウム濃度が高くなり、血管や腎臓に蓄積していきます。
クッシング症候群は、副腎皮質ホルモン(ステロイド)の過剰によって、著しい体重増加と高血糖と高血圧、そして動脈硬化を引きおこす病状です。その原因は、強いストレス、ステロイド治療、副腎または脳下垂体の腫瘍のいずれかです。
要するに、「動脈硬化を防ぐために、コレステロールを減らさなければいけない。そのために、野菜をたくさん食べないといけない」などという考えは間違いなのです。
動脈硬化の主原因はカルシウムであり、血液中のカルシウムが過剰になることが最大の問題なのです。
参考文献:『健康食品・中毒百科』内藤裕史著(丸善)