低血糖が、ガンを発生させる!

ガン細胞は、正常な細胞の5倍もブドウ糖を消費することから、「ブドウ糖はガンのエサ」と言われています。しかし、事実はまったく逆のようです。

 

低血糖が、ガンを発生させる

ジョンズ・ホプキンス大学のボーゲルシュタイン教授は、大腸ガンのほぼすべての遺伝子を発見し、発ガンのメカニズムを明らかにしました。

2009年、ボーゲルシュタイン博士らが、「糖質制限とガン発症の関連性」を解明した研究を「サイエンス」誌に発表しました。[1]

その研究によると、「発ガン遺伝子(KRAS・BRAF)が変異すると、GLUT1(グルコース輸送体=ブドウ糖を細胞内に取り込む膜輸送タンパク質)という遺伝子の発現が増える。そしてGLUT1が多く発現した細胞は、細胞内へのブドウ糖の取り込み量が増え、細胞外の糖質が低い状態(低血糖)でも生存する。発ガン遺伝子(KRAS)に変異のない正常細胞はほとんど死滅する」ということです。

つまり、『血糖値が低いと、GLUT1の発現量が多い細胞だけが生き残り、そのなかの4%がガン化する』ということです。

ということは、「糖質制限によって低血糖になっている時間が多い人は、ガンになりやすい」ということです。

 

高血糖より低血糖のほうが危険!

糖尿病の予防や合併症の進行を防ぐために、厳格に血糖値を下げようとすると命にかかわるという研究もあります。

2001年からアメリカ国立衛生研究所が行なった「アコード試験」です。「糖尿病の血糖コントロールを正常化させることで、心血管病に与えるリスクが低減するか?」を調べた大規模な研究です。

この研究は、「HbA1cを6.0未満に下げたグループは、HbA1c7.0~7.9のグループより死亡率が22%も高くなった」という結果になり、当初5年間の追跡調査を行なう予定だったのに、わずか3年7ヶ月で打ち切られました。[2]

つまり、「厳格な血糖コントロールは、低血糖のリスクを高め、死亡率を上昇させる」ということです。

この研究が発表された後、世界中で様々な追試が行なわれ検証されました。そのなかで重要な研究が、イギリスのカーディフ大学のクレイグ・カリー博士らが、4万8000人の糖尿病患者のデータを解析して、「HbA1cと死亡率の関連」を調べた研究です。

結果は、「死亡率がもっとも低いのは、HbA1cが7.5」でした。HbA1c7.5%と比較して、HbA1c6.4では死亡率が52%上昇し、反対にHbA1c11.0では死亡率が79%上昇したということです。[3]

これらの研究から、「高齢者はHbA1cを8.0未満に抑えればよい」と基準が変わったのです。

HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)は、全ヘモグロビンのうち何%が糖化しているかを示す数値で、HbA1c8.0なら全ヘモグロビンの8%が糖化しているということです。糖化したヘモグロビンは酸素を運ぶことができず、元に戻ることはないため、赤血球の寿命(約120日)まで待つしかありません。ですからHbA1cを下げるには、少なくとも3~4ヶ月はかかります。

そして、目標は7.5でよいのです。50代60代も7.0でよいのです。

糖尿病の合併症が進行するのは、HbA1cが8.0を超えてからです。しかも、HbA1cが8.0を超えたからといって、すぐに合併症が発症するわけではありません。HbA1cが8.0以上という高血糖状態が何年も続くと徐々に毛細血管が閉塞していって、いずれ合併症が発症するのです。ですから、8.0未満に保てば合併症はおきないのです。

したがって「絶対にHbA1cを6.2未満にしよう」と頑張る必要はないのです。「HbA1cが低ければ低いほど良い」という考えでいると、糖質を摂らないようになり、低血糖になっている時間が増えます。

低血糖になると、自律神経も正常に機能しなくなり、悪寒、疲労感や虚脱感、頭痛やめまい、不安やイライラなどといった自律神経失調症状が現れます。また脳の機能も低下しますから、集中力や記憶力、判断力などが低下し、うつ病や認知症のリスクも高まります。

そして極度の低血糖では、失明したり失神して倒れたり、突然死したりすることもあります。

本当に危険なのは、高血糖より低血糖なのです。

 

[1] Science 2009;325:1555-1559

[2] N Engl J Med 2008;358:2545-2559

[3] Lancet 2010;375:481-489

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