生理のむくみを減らす秘訣

生理になると、なぜむくむのか?

生理になると満潮になったようにむくんで、肩やお腹がパンパンになったり足腰が重くなったりする女性がたくさんいます。むくみは「血管から水分が漏れ出す」ことなので、実際はむくみではなく『血液量が増えている』のです。
生理になると、なぜ血液量が増えるのでしょうか?
その理由は、腎臓にあります。腎臓は、糸球体で血液をろ過しています。その量は毎日180リットルにも及びます。糸球体でろ過した原尿の大半(99%)を尿細管で再吸収して、水分やアミノ酸やブドウ糖やビタミンやミネラルなどを血液に戻しています。
血液量は、この尿細管の再吸収によってコントロールされているのです。

レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAA系)

血液量は、血液中のナトリウムの量によって決まります。ナトリウムが多いほど、血液量が増えます。
血液中のナトリウムの量をコントロールしているのが、腎臓の尿細管です。尿細管が血液量を調整するしくみが、「レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAA系)」です。
血液をろ過する『糸球体の血流量が減少する』、あるいは『血液の塩分濃度が薄くなる』と、腎臓から「レニン」というホルモンが分泌されます。
レニンは、血液中のアンジオテンシノーゲンを「アンジオテンシンⅠ」に変えます。
アンジオテンシンⅠは、肺でACE(アンジオテンシン変換酵素)によって「アンジオテンシンⅡ」に変わります。
このアンジオテンシンⅡによって心臓のポンプ力が強くなり、血圧が上がります。
さらにアンジオテンシンⅡは、副腎に作用して「アルドステロン」の分泌を促します。
アルドステロンは尿細管に作用して、血液中のナトリウムを増やします
その結果、血液量が増えるのです。

生理になると、血液量が増えるのは?

では生理になると、なぜ血液が増えるのでしょうか?
レニンが分泌されるのは、『糸球体の血流量が減少する』からでした。
そうです! 生理による出血で血液量が減るために、レニンが分泌されるのです。
するとレニンから、アンジオテンシンⅠ→アンジオテンシンⅡと生成されて、さらにアルドステロンが分泌されます。アルドステロンによって血液中のナトリウムが増えて、血液量が増えるのです。
塩分(塩化ナトリウム)の多いものを摂取すると、さらに血液量が増えます。例えば、ラーメン一杯には塩分が6g前後も含まれていて、特にスープに多く含まれています。もしスープを全部飲み干してしまうと、この塩分が排出されるのにおよそ1週間もかかります。

低カリウムの影響

ナトリウムが増える一方で、カリウムは減少します。腎臓の尿細管は、ナトリウムを再吸収する代わりに、血液中のカリウムを排泄するからです。そのため血液は『高ナトリウム・低カリウム』になり、血液量が増えます。
カリウムは、『筋肉の弾力・張力を維持しているミネラル』です。骨格筋だけでなく、心筋、血管平滑筋、胃腸のぜん動筋、膀胱や尿道の筋肉などといったすべての筋肉の弾力・張力を担っています。
したがって低カリウム(3.5mEq/L未満)になると、筋力が低下して疲れやすくなり、肩コリや腰痛になり、心臓のポンプ力が弱くなってめまいや立ちくらみがおきやすくなったり、胃腸のぜん動が弱くなって消化が悪くなったり便秘になったり、排尿障害がおきたりします。さらにカリウムが減少すると、筋肉が痙攣したり、手足が麻痺して動かなくなったりします。また、不整脈をおこすこともあります。
ちなみに、血中カリウムの正常レベルは、3.6~5mEq/Lです。mEqは「メック」と読みます。カリウムの原子量は39ですから、mEq×39=重量(mg)になります。

低カリウム状態が続くと、やがて「脱水」になります。なぜ、脱水になるのでしょうか?
尿細管の再吸収は、ナトリウムとカリウムの交換によって行なわれています。糸球体がろ過した原尿からナトリウムを血液に戻す代わりに、血液中のカリウムを尿に排泄しているのです。
しかし血液のカリウムが不足すると、その交換ができなくなります。すると、ナトリウムが尿で排泄されていきます。体内の水はナトリウムと結合しているので、ナトリウムとともに水も排泄されていきます。その結果、トイレが近くなります。(頻尿)
そして、尿で水分がたくさん出ていくほど、血液の水分は減少します。(脱水)
その結果、血液がドロドロになり、皮膚がカサカサして痒みや湿疹が出たり、ドライアイになって目が痛くなったり、足が攣ったりなどといった「乾燥症状」が現れるようになります。

つまり低カリウムになると、初めは高ナトリウムによって血液量が増加しますが、しばらく経つとナトリウムも不足して脱水になるのです。

低カリウムになる原因

低カリウムになる原因は、いくつもあります。
まずは、『低コレステロール』です。血液中にカリウムを維持しているのは、コレステロールです。健康で丈夫な人は、概ね240~280mg/dl前後あります。160mg/dl以下を「低コレステロール症」といいますが、180mg/dl以下でコレステロールが少なめといえます。
コレステロール値が低下すると、血液中にカリウムを維持する力が弱くなるので、低カリウムになりやすくなります。

『カリウムの排出を促す原因』も、いくつかあります。
まずは、ストレスです。精神的ストレスだけでなく、大手術や大怪我や痛みなどといった肉体的ストレスでも、副腎皮質ホルモンが分泌されます。すると、カリウムがどんどん排出されてしまうのです。
また、大量に発汗したり下痢したりすることで、カリウムがたくさん失われます。
例えば、運動やサウナ、ホットヨガなどで汗をガンガンかくと、カリウムが大量に失われます。
薬にも、カリウムの排出を促すものがいくつかあります。
例えば、気管支拡張剤やステロイド剤、甲状腺ホルモン剤、利尿剤などです。
甘草のグリチルリチン酸は、アルドステロンと同様に尿細管でナトリウムの再吸収を促し、カリウムを排出させます。
このようなカリウムの排出を促す要因が何かあれば、生理のときに低カリウムになりやすくなるでしょう。

生理時の血液量増加を抑えるには?

生理のときにも血液量の増加を抑えられれば、体調を崩さないですむでしょう。それには、どうすればいいでしょうか?
ナトリウムを増やして血液量を増加させるのは、アルドステロンです。
アルドステロンは、レニンが分泌されることによって増えます。
ですからレニンの分泌を抑えれば、アルドステロンも抑えられます
レニンは、『糸球体の血流量が減る』と分泌されます。

糸球体の血流量を減らすもっとも大きな原因は、『痛み止め』です。
痛み止め(非ステロイド性消炎鎮痛剤)を生理痛や頭痛のために常用している女性は、かなり多いでしょう。
痛み止めは、腎臓の糸球体に血液を入れる輸入細動脈を収縮させるため、糸球体の血流量が減少するのです。すると腎臓からレニンが分泌されて、RAA系が働くことで血液量が増加し、血圧が上がることになります。

また、『貧血』あるいは『経血量が多い』ことも、糸球体の血流量を減らしてレニンの分泌を促す要因になるでしょう。

貧血とは、赤血球が少ないことです。赤血球は、全身に酸素を運ぶ細胞です。ですから貧血ということは、全身が酸欠になるということです。例えば、脳が酸欠になれば、頭痛、めまいや立ちくらみ、ふらつきといった症状がおきます。また、筋肉が酸欠になれば、肩コリや腰痛、疲労感や倦怠感、脱力感などといった症状が出るでしょう。
すると心臓は、少しでも全身に酸素をたくさん送ろうとして心拍数を増やします。その結果、息切れや動悸、頻脈などがおきるでしょう。
また貧血になると、血液量も少なくなります。血液の濃度を一定に保とうとする働きがあるからです。
日本には、貧血の女性がたくさんいます。
2006年、虎ノ門病院血液科の久住英二医師らが発表した、健康な日本人女性1万3000人以上を対象とした調査によると、50歳未満の日本人女性の22.3%が貧血で、そのうちの25.2%が重度の貧血でした。また、妊婦の30~40%が貧血でした。
なんとなく体調が悪い、イライラする、めまい、ふらつき、疲労感、倦怠感がある(だるい)といった不定愁訴は、貧血が原因のことが多いのです。
貧血の原因はいくつかありますが、もっとも多いのは「鉄欠乏性貧血」です。
鉄は、鉄鍋で調理した食品やホウレン草などに含まれる「非ヘム鉄」はほとんど吸収されません。
吸収がよいのはタンパク質と結合した「ヘム鉄」で、赤身の肉や魚に多く含まれています。
赤身の肉や魚の赤い色は、「ミオグロビン」によるものです。ミオグロビンは、ヘム(鉄)とグロビン(タンパク質)が一つずつ結合したもので、筋肉内で酸素を貯蔵する役割を担っています。運動量が多いほどミオグロビンが多くなり、濃い赤色になります。
ですから貧血を治すには、「赤身の肉や魚」を毎日食べることです。
例えば、牛肉の赤身、カツオやマグロ、イワシやサバ、アジ、ブリ、アサリなどといったものです。
ちなみに、もっともミオグロビンの含有量が多いのはクジラの肉です。人間が一度の呼吸で肺に酸素を10~15%しか取り込めないのに対して、クジラは80~90%も取り込むことができます。さらに、クジラの筋肉に含まれるミオグロビンの量は、他の生物に比べて圧倒的に多いこと知られています。そのためクジラは、長い時間潜っていることができるのです。

経血量が多い場合は、どうすればいいでしょうか?
正常な経血量は20~120mlとされていますが、120ml以上という人も多いでしょう。
生理は「子宮内膜の炎症」ですから、「炎症を減らす」ことが重要です。
炎症を促進するのは、リノール酸です。
ですから、リノール酸が多く含まれる「サラダ油」をできるだけ摂らないことです。
リノール酸が多いサラダ油は、大豆油・紅花油・コーン油・ヒマワリ油・ナタネ油・キャノーラ油・綿実油・グレープシード油などです。原材料に「植物油脂」と記載されていたら、それはサラダ油のことです。「植物油脂=サラダ油=リノール酸=炎症悪化」と頭に叩き込んで、植物油脂が含まれた加工食品をなるべく食べないようにしましょう。
また、サラダ油を加熱すると酸化して、毒性のある過酸化脂質になります。ですから、加熱調理にはサラダ油を使わないようにしましょう。
加熱しても酸化しない油脂は、バター・ラード(豚脂)・MCTオイル(中鎖脂肪酸)といった油脂です。また米油も酸化しにくいですから、調理に使ってもよいでしょう。

炎症の原因になるのは、『小麦毒(グルテン)・大豆毒(レクチン)・果糖』です。
これらの成分はすべて、腸をリーキーガットにする成分です。リーキーガットとは、『腸の栄養を吸収する細胞同士の結合がゆるんだ状態』です。リーキーガットになると、未消化なタンパク質や腸内細菌などが血液に吸収されてしまいます。すると腸の免疫細胞が「異物が侵入した」と判断して、その異物を排除しようとします。そのため軽度な炎症がおきます。この炎症は痛みや発熱などの症状はありませんが、血液中に「炎症をおこせ!」というメッセージ物質(炎症性サイトカイン)が増えます。血液中の炎症性サイトカインが増えるほど子宮内膜の炎症が増大して、痛みや出血量が増すでしょう。
小麦毒(グルテン)・大豆毒(レクチン)・果糖の3つを控えれば、腸の炎症が軽減し、その結果、炎症性サイトカインが減って、痛みや出血量を減らせるでしょう。
果糖は果物や果汁のほか、果糖ブドウ糖液糖が入ったドリンクにたくさん入っています。また、砂糖はブドウ糖と果糖が結合した糖ですから、半分は果糖です。白砂糖も黒砂糖も、果糖が多いことは変わりありません。ちなみに三温糖は、白砂糖をさらに精製してできたもので、茶色は焦げた色です。

『出血を促す成分』をできるだけ摂らないことも重要です。つまり、血管を拡張させる作用がある成分が含まれている食品をなるべく摂らないことです。
例えば、大豆に含まれる「イソフラボン」を過剰に摂ると、血管が拡張して出血しやすくなります。1日の摂取量の目安は70~75mgとされていますが、できれば40mg以内に抑えたほうがいいでしょう。納豆なら1パック分です。もし豆腐や豆乳やキナコなどをたくさん摂取するとイソフラボンが過剰になって、出血量が増えるでしょう。
また、オリーヴオイルや赤ワインやチョコレートなどに含まれているポリフェノールも血管を拡張させる作用がありますから、あまり摂らないほうがいいでしょう。
ゴマに含まれるリグナン(セサミン)も血管を拡張させる作用がありますから、なるべく摂らないほうがいいでしょう。
チーズやグレープフルーツ、オレンジジュースなどにも血管拡張作用がありますので、これらもなるべく摂らないほうがいいでしょう。

さらに、出血の原因となる生薬に、芍薬、朝鮮人参、当帰、茯苓、桂皮(シナモン)、甘草、生姜、大棗(ナツメ)、半夏、川芎などがあります。
芍薬には、出血を誘発する「ペオニフロリン」が含まれています。芍薬は、葛根湯や当帰芍薬散、芍薬甘草湯、桂枝茯苓丸、小青竜湯、十全大補湯、小建中湯など56種の漢方薬に配合されています。
朝鮮人参には、女性ホルモン作用(血管拡張作用)がある「ジンセノシド」が含まれています。そのため朝鮮人参を飲んでいると、出血過多や不正出血がおきる恐れがあります。朝鮮人参は、人参湯、補中益気湯、十全大補湯、大建中湯など38種の漢方薬に配合されています。
当帰には、「サフロール」という発ガン性のある成分が含まれていて、アトピー性皮膚炎を悪化させたり漢方薬腎症(間質性腎炎)の原因になったりします。
漢方薬は決して安全ではなく副作用もあるので、常用は止めたほうがいいでしょう。

カリウムを十分に摂ること

食事のポイントは、塩分(塩化ナトリウム)を減らして、カリウムを十分に摂ることです。
カリウムは野菜や果物に多く含まれていますが、野菜や果物をたくさん摂取すると果糖や食物繊維も多く摂ることになります。
例えばバナナにはカリウムが多く含まれていますが、果糖やフラクタンも多く含まれています。
果糖は肝臓で中性脂肪に変わるので、高脂血症や肥満の原因になります。
フラクタンは果糖が連結した食物繊維で、まったく消化されません。消化されないものは腸内細菌が分解(発酵)して、ガスが発生します。その結果、お腹が膨満して、腹痛や下痢や便秘になります。すると副交感神経が強く働いて、炎症が増大します。
つまり、食物繊維をたくさん摂るほど腸内ガスが多く発生し、それによって副交感神経が強く働くことで血管が拡張して出血しやすくなり、炎症も増大してしまうのです。だるいとか、朝起きられない、低血圧、冷えるなどは、すべて副交感神経の症状です。

ですから果糖や食物繊維が少なくて、カリウムが多い食品が望ましいわけです。
その代表的な食品が、アボカドです。アボカドには、100gあたり720㎎もカリウムが含まれています。アボカド1個は約120gですから、半個食べれば432㎎くらい摂れます。また、「森のバター」とも言われる良質な脂肪とビタミンEも豊富で、さらに赤血球をつくるのに欠かせない葉酸も豊富に含まれています。

ジャガイモも、カリウムが豊富に含まれています。ジャガイモには、100gあたり410㎎もカリウムが含まれています。中くらいの大きさのジャガイモを半分食べれば、328㎎のカリウムを摂取できます。またビタミンCも豊富で、デンプンと結合しているため熱で破壊されにくいため、ビタミンCを効率よく摂取できます。
ただし、油で揚げないことが重要です。油で揚げると「アクリルアミド」という発ガン性物質が生成されてしまうからです。ノンフライヤーで加熱すると、油で揚げるより高温になるため、さらに多くのアクリルアミドが生成されてしまいます。
ですからフライドポテトやポテトチップス、コロッケなどはNGで、茹でるか蒸かして食べるのが安全です。
ちなみに、芽には猛毒「ソラニン」が含まれていますので、芽はなるべく大きく深く取り除くことが重要です。また、皮が緑色になったジャガイモや、未熟なミニジャガには全体にソラニンが充満していますから、丸ごと捨てましょう。ソラニンは煮汁にも溶出し、いくら加熱しても毒性がなくなることはありません。

肉や魚にもカリウムが含まれていて、とくに多いのは豚肉と鮭です。
豚肉には100gあたり250㎎、には100gあたり350㎎もカリウムが含まれています。豚肉には血管の拡張を抑えるビタミンB2が多く、鮭には抗酸化力が高いアスタキサンチンも含まれています。

海苔もカリウムが豊富で、100gあたり2400㎎も含まれています。海苔には、ビタミンCやカルシウム、マグネシウム、さらに赤血球をつくるのに欠かせない鉄とビタミンB12も含まれています。

こういった食品からカリウムを十分に摂取すれば、むくみと生理痛を減らせるでしょう。推奨されているカリウム摂取量は、1日3.5g程度です。

また、以下を混ぜ合わせた「補水液」を毎日2~3回に分けて飲むのも有効でしょう。

「松原式補水液」
水/お湯:500ml
やさしお:2g (「やさしお」は、自然塩と塩化カリウムを混ぜた塩)
ブドウ糖:10g
クエン酸:少々

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