乳酸菌・酪酸菌が、発ガンを促す!

乳酸菌や酪酸菌は「善玉菌」と呼ばれて、胃腸に多いほど良いと言われています。

ところが近年の研究ではまったく逆で、乳酸菌や酪酸菌が多いほど胃腸の具合が悪くなり、発ガンのリスクも高くなることが明らかになっているのです。

 

乳酸菌が「ガン」を引きおこす

かつて培養法によって研究されていた時代には、私たちの腸内には約100種類の細菌が120兆個ほど棲息していると言われていました。

ところが近年、遺伝子解析によって今まで見つからなかった菌が次々と発見され、腸内にはおよそ1000種類の細菌が約1000兆個も棲息していることが明らかになりました。

 

また「胃は強酸性だからピロリ菌を除いて、菌は棲息できない」と言われていましたが、胃から128種もの細菌が見つかっています。例えば、乳酸菌(連鎖球菌と乳酸桿菌)、ベイロネラ、プレボテラといった菌です。

それらの菌によって、胃腸の具合が悪くなることも分かってきました。

 

2019年、オーストラリアの研究者は、「胃ガンが存在する胃粘膜には乳酸菌が多い」ことを発表しました。[i]

2022年、韓国から報告された研究でも、「胃ガンで乳酸桿菌とベイロネラ菌が増加している」ことが発表されました。[ii] ベイロネラ菌は、亜硝酸塩の蓄積に関与しています。

亜硝酸塩はボツリヌス食中毒を防ぐためにハムやソーセージなどに添加されていて、胃に入ると発ガン性物質であるニトロソアミンに変化します。

ニトロソアミンは、硝酸態窒素からも生成されます。硝酸態窒素は、ホウレン草や小松菜、チンゲン菜などといった緑色の濃い葉野菜に多く含まれています。

 

中国の研究では、「胃ガンの人の糞便には乳酸菌(連鎖球菌と乳酸桿菌)が明らかに多い」と発表されています。[iii] [iv] つまり胃ガンの人は、胃だけではなく大腸にも乳酸菌が増加しているのです。そして、胃や大腸で増えた乳酸菌によって乳酸が大量に産生され、乳酸によって組織が酸性化することでガン化を促しているというのです。

乳酸菌は、ピロリ菌と同様にウレアーゼという酵素を使って、血液中の尿素から強アルカリ性のアンモニアを生成して、菌の周りにアンモニアのバリアを作ります。だから強酸性の胃の中でも棲息することができるのです。

 

そして胃に乳酸菌が増えた状態で塩分を多く摂取すると、胃ガンになりやすくなります。塩を多く摂取すると胃の粘膜がただれて、遺伝子異常がおきやすくなるからです。

つまり、乳酸菌+塩分が胃ガンを引きおこすというわけです。ということは、「漬物を多く食べるほど胃ガンになりやすい」ということです。日本、中国、台湾、韓国で調査した研究で、漬物の摂取量と胃ガンのリスクが相関しており、「漬物を毎日100g食べると、食べない場合に比べて、発ガンリスクが約2倍に増加する」と発表されています。[v]

 

乳酸菌が発ガンリスクを高めるのは、胃だけではありません。

2017年、ケンブリッジ大学が行なった遺伝子解析で、食道腺ガンの半数で乳酸菌がガン細胞やその周囲組織で発見され、乳酸桿菌がガン周囲で増殖している写真が提示されました。[vi]

ガン細胞は酸性の環境を好むので、乳酸菌が酸性の環境を作ると、ガン細胞が増殖しやすくなると考えられます。

 

2020年、理化学研究所が発表した研究で、「ガンの周囲が酸性になると2型リンパ球の機能が低下する」ことが明らかになりました。[vii] ガン細胞は、自ら乳酸を産生して2型リンパ球の働きを弱めて、自らが増殖しやすい酸性の環境を作り出すのです。

2017年、バルセロナ大学のリカルド・ペレスートマス博士らは、「乳ガン・胃腸ガン・肺ガン・泌尿生殖器ガン・黒色腫・肉腫などといった様々な種類のガンの患者の血清中に高レベルの乳酸が検出された」と発表しました。[viii]

 

また、すい臓ガンになった組織にも乳酸桿菌が非常に多いことが報告されています。

2022年、カナダのトロント大学が、「腸内の乳酸桿菌が、すい臓ガンの免疫力を弱める」と発表しました。[ix]

2008年、すい炎患者を対象に行われたオランダの研究で、「152人に1日100億個の乳酸菌製剤を服用させて、144人は乳酸菌製剤を服用させないで28日間の経過を調査したところ、乳酸菌製剤を服用しなかったグループの死亡者数は9人であったのに対して、乳酸菌製剤を服用したグループの死亡者は24人と、死亡率は約3倍に高まり、そのうち9人は腸虚血をおこして致命的な状態に陥った」と発表されています。[x]

日本でも2019年に、「乳酸菌製剤(カゼイ菌)を服用した124名を対象に15年におよぶ調査を行なった結果、すい臓ガンの発症リスクが80倍にも高まった」という結果が発表されています。[xi]

 

乳酸菌で「過敏性腸症候群」が悪化する!

腹痛や下痢や便秘をくり返す過敏性腸症候群の人の腸内は酸性過多になっていて、乳酸菌(乳酸桿菌や連鎖球菌)やクロストリジウム菌などが多いことが明らかになっています。その結果、腸内で異常発酵が生じて、ガスが過剰に発生するのです。

そして、ガス膨満によって腸が動かなくなり便秘になるのです。

また、腸内が酸性過多になることで、免疫細胞の肥満細胞が活性化してヒスタミンや痛覚刺激物質が増加します。それによって、腹痛や下痢が生じるのです。

したがって、過敏性腸症候群の人が乳酸菌製剤や乳酸菌のエサになるような食品を摂ると症状が悪化するのです。過敏性腸症候群の人は、胃腸内の菌を減らさないと良くならないのです。

 

 

 

 

 

腸内ガスによってリーキーガットになる

過剰なガスで腸が膨満すると、リーキーガットになります。膨満によって腸壁が引き伸ばされると、腸の細胞と細胞の隙間が広がるからです。

リーキーガットになると、未消化なタンパク質や腸内細菌が腸から血液に侵入します。その侵入物はすぐに腸の免疫細胞に退治されますが、その際に炎症性サイトカインが生成されます。炎症性サイトカインは、「炎症をおこせ!」という免疫細胞のメッセージ物質です。

炎症性サイトカインが血液によって全身に循環することによって、身体のあちこちに炎症がおきやすくなります。その結果、アレルギーがおきやすくなったり、首や腰が痛くなったり、頭がボーッとしたりするようになります。

 

野菜を食べるほど便秘になり、うつ病になりやすくなる

胃腸に乳酸菌が増えることは、様々な弊害をもたらすのです。

では、乳酸菌が増える要因は何でしょうか?

まずは、乳製品の摂取です。牛乳をはじめチーズやヨーグルト、アイスクリームなどには「乳糖」が含まれています。

4千年以上も酪農を主にしてきた民族と違って、日本人の大半は乳糖を消化できない「乳糖不耐症」なのです。消化されない乳糖は、そのまま大腸に達して乳酸菌のエサになります。するとガスが発生するとともに、乳酸菌がどんどん増えてしまいます。

また、野菜の摂りすぎも乳酸菌を増やします。野菜に含まれる食物繊維(セルロース)も消化されないため、そのまま大腸に達して乳酸菌のエサになります。するとガスが発生するとともに、乳酸菌がどんどん増えてしまいます。

食物繊維によって増える乳酸菌に、アリスティペス菌があります。アリスティペス菌は腸のぜん動を止めてしまうため、この菌が増えると便秘になります

つまり、野菜をたくさん食べるほどアリスティペス菌が増えて、便秘になるのです。

 

また、食物繊維の一部は発酵して脂肪酸になるため、肥満の原因にもなります。

野菜ばかり食べていれば体脂肪が減って痩せるというイメージとは真逆で、野菜をたくさん食べることで太ってしまうことも人もいるのです。

 

さらに、「アリスティペス菌がうつ病に関連している」という報告もあります。

ノルウェーのヘドマーク大学の研究で、「うつ病37人と、うつ病ではない人15人の腸内細菌を調べたところ、うつ病ともっとも相関していたのがアリスティペス菌でした。

 

食物繊維を摂っても大腸ガンは防げない

「ヨーグルトと野菜を食べれば、腸がきれいになって健康になる」というのは明らかに間違いなのです。

ブルガリアなどの長寿者が多い地域を調査して「ヨーグルト不老長寿説」を提唱したパスツール研究所のエリー・メチニコフは、自らも毎日大量にヨーグルトを食べ続けて、71歳で動脈硬化と尿毒症で亡くなっています。

 

また、食物繊維が良いと言われるようになったのは、英国の医師であるデニス・パーソンズ・バーキットが「食物繊維が大腸ガンを防ぐ」と提唱したことによります。

彼は、宣教師としてアフリカ・ウガンダに渡って、住民の生活をよく観察しました。そして、アフリカの排便回数が多い民族に大腸ガンが少ないことに気づいて、「食物繊維が多い食事によって排便が多くなり、腸がきれいになるからだ」と考えたのです。

ところが実は、ウガンダに大腸ガンが少ない理由は、食物繊維が多いからではなく、寿命が短かったからです。ほとんど人は、ガンになる前に亡くなっていたのです。

 

今世紀になって、「大腸ガンの予防と食物繊維は無関係である」という研究結果が続々と出ています。

2005年、国立がん研究センターが約9万人もの大規模な疫学調査を行った結果、「野菜や果物をたくさん食べても、大腸ガンは防げない」と発表しています。[xii]T

ほとんどの大腸ガンは大腸ポリープから発生しますが、2017年、中国とスウェーデンの研究で、「食物繊維を増やしても大腸ポリープの再発を防げなかった」と発表されています。[xiii]

つまり、食物繊維が多い食事をしても大腸ガンは防げないのです。

 

酪酸が「大腸ガン」を誘発する!

「酪酸が、免疫の暴走を抑えるリンパ球(Tレグ)を増やしてアレルギーを抑制する」ことから、酪酸菌が脚光を浴びています。また酪酸が大腸の粘膜を厚くすることによって、粘膜バリアが強化されて病原体の侵入を防ぐと言われています。

しかし一方で、酪酸が大腸ガンのリスクを高めるという研究もあります。

2021年、有明ガン研究センターで、酪酸と大腸ガンの関係を調べた結果、「酪酸が大腸ガンを誘発する」という結論が出ています。[xiv]

つまり、酪酸によって大腸ガンのリスクが高まるのです。

[i] Vinasco K, et al. Biochim Biophys Acta Rev Cancer. 2019;1872(2):188309.

[ii] Park JY, et al. Sci Rep. 2022;12:4285.

[iii] Zhang Z, et al. Appl Biochem Biotechnol. 2022;194:1510-1526.

[iv] Wu J, et al. Dis Markers. 2020;2020:3461315.

[v] Yoo JY, et al. Cancers (Basel). 2020;12(4):996.

[vi] Elliott DRF, et al. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2017;2:32-42.

[vii] Wagner M, et al. Cell Rep. 2020;30(8):2743-2757e.

[viii] Perez-Tomas R, et al. Cancers (Basel). 2020;12:32-4

[ix] Hezaveh K, et al. Immunity. 2022;55(2):324-340.e8.

[x] Besselink MG, et al. Lancet. 2008;371:651-659.

[xi] Ishikawa H, et al. Nutrients. 2020;12(6):1599.

[xii] Tsubono Y, et al. Br J Cancer. 2005;92:1782-1784.

[xiii] Yao Y, et al. Cochrane Database Syst Re. 2017;1(1):CD003430.

[xiv] Okumura S, et al. Nat Commun. 2021;12(1):5674

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