五十肩を治す秘訣

肩が痛くて腕を上げられないとか、夜中に痛みで目が覚めてしまうといった五十肩は、原因によって治し方が異なります。

原因を知らないと、まったく逆効果になる治療をして悪化させてしまいかねません。

 

五十肩の原因による分類

俗に「五十肩」といわれるのは、年齢的に50歳前後になりやすいからとか、50%しか腕を上げられないからと言われていますが、いずれにしても正式な病名ではありません。

五十肩といわれる症状を原因によって分類すると、次の4つに大別できます。

  • 癒着性肩関節包炎
  • 腱板断裂
  • 上腕二頭筋長頭腱炎
  • 石灰沈着性腱板炎

 

このうちオイルマッサージなどの施術で治るのは、③上腕二頭筋長頭腱炎だけです。

 

癒着性肩関節包炎

痛い側の腕を反対の手で持ち上げても上げにくく、また、前後ろ横どちらに上げようとしても痛いといった症状であれば、「関節包炎」と考えられます。

関節を包んでいる薄い膜(滑膜と繊維包)を、「関節包」といいます。この関節包に炎症がおきて分厚くなることによって、肩関節が痛くなり動かせなくなる病変です。

炎症が起きている部位が関節包なので、肩の筋肉をゆるめてもまったく効果はありません。肩に鍼を打ったり指圧したり揉んだりすると、かえって悪化してしまいます。また、無理に動かそうとがんばると関節包が破けて、さらにひどいことになってしまいます

 

治すには、関節包の炎症を鎮めることです。

最も効果的なのは、関節包にステロイドを注射することです。あるいは、痛み止めを服用することです。激痛のときは、こういった方法で痛みを軽減させるしかありません。

 

炎症ですから、炎症を悪化させる食品も控えるべきです。

炎症を悪化させる食品の3大成分は、リノール酸・レクチン・果糖です。

まずは、「リノール酸」です。サラダ油といわれる植物油に多く含まれています。例えば、紅花柚・大豆油・コーン油・ヒマワリ油・綿実油・キャノーラ油・菜種油・グレープシード油・ゴマ油などといった油脂です。また、これらの油脂に水素を添加してつくったマーガリンやショートニングには、細胞に有害な「トランス脂肪酸」が含まれています。

こういった油脂を調理に使わないようにして、これらの油脂が含まれている加工食品を食べないようにすることです。

使ってよいのは、バターやラード、オリーブオイル、コメ油やシソ油(エゴマ油)、ココナッツオイルやMCTオイルなどといった油脂です。

 

次に、「レクチン」です。レクチンは、植物が鳥や虫に食べられるのを防ぐためにつくる「毒」で、主に穀類や豆類の外皮や胚芽に多く含まれています。

玄米や雑穀や大豆などをたくさん食べると、レクチンによって胃腸の粘膜に炎症がおきて「リーキーガット」になります。

すると腸から、未消化なタンパク質や腸内細菌が血液に侵入するようになります。

血液に侵入した未消化タンパクや腸内細菌は、免疫細胞によってすぐに排除されますが、その際に「炎症性サイトカイン」が生成されます。炎症性サイトカインは、「炎症をおこせ!」というメッセージ物質です。

炎症性サイトカインが血液によって全身に循環すると、関節包の炎症がさらに悪化して痛みが強くなります。

ですから、できるだけレクチンを摂らないように注意すべきです。

 

レクチンが多く含まれている食品例

玄米・雑穀(小麦・大麦・ライ麦・ハト麦・稗・粟・キビ・キヌアなど)

豆類(大豆・小豆・ナタマメ・インゲンマメ・レンズマメ・ヒヨコマメなど)

ナス科の野菜(ナス・トマト・ピーマン)

ウリ科の野菜(きゅうり・カボチャ・スイカ・冬瓜・ニガウリ)

 

炎症を促す食品成分の3つ目は、「果糖」です。

腸から吸収された果糖は、肝臓でほぼ100%中性脂肪に変換されます。そして、高脂血症になるか脂肪肝になります。

そうなるとインスリン抵抗性が上がって、高血糖になります

高血糖になると、血液中の糖とタンパク質が反応して、炎症と老化を促す物質:AGEs(終末糖化産物)が生成されます。それによって、関節包の炎症が悪化します

果糖は、果物や果汁をはじめ、砂糖や果糖ブドウ糖液糖が入った食品にたくさん含まれています。つまり、甘いものをたくさん飲んだり食べたりしていると炎症が悪化して治りが遅くなるのです。

 

腱板断裂

肩関節の筋肉(肩甲下筋・棘上筋・棘下筋・小円筋)が上腕骨に付着する部分を、「腱板」といいます。この腱板が骨から剥がれていくことを、「腱板断裂」または「腱板損傷」といいます。とくに断裂がおきやすいのが、棘上筋の腱板です。

腱板が断裂すると、自力では腕を上げられなくなります。痛くないほうの手で腕を上げて、急に放すと激痛がおきます。

腱板断裂は、鍼や指圧、マッサージなどといった施術で改善することはありません

 

上腕二頭筋長頭腱炎

肘を曲げるとできる力こぶをつくる筋肉が、上腕二頭筋です。上腕二頭筋の肩側には2本の腱があって、短いほうは肩甲骨の烏口突起に付着し、長いほうは肩甲骨の関節上結節に付着しています。

炎症をおこしやすいのは長いほうの腱で、炎症がおきると重いものを持ちあげることができなくなります。中華鍋を毎日長い時間振っている料理人が、なりやすい五十肩です。

原因は、屈筋の使いすぎです。

治すには、大胸筋と肘の内側をゆるめることです。また、肩には湿布をするのが有効です。

大胸筋は胸全体を覆っている大きな筋肉で、脇のところで太い腱になって上腕骨の上部に付着します。この腱の部分をゆるめることが、痛みを軽減する第一のポイントです。

大胸筋がゆるんだら、肘の内側をゆるめることです。肘の内側(小指側)にある円回内筋と橈側手根屈筋が、とくに緊張して硬くなっています。この部位をよくゆるめることが、痛みを軽減する第二のポイントです。

ゆるめるには、「ロイヤルアメイジング・クリーム」をすり込めばよいのです。

 

石灰沈着性腱板炎

肩の腱板にカルシウム(石灰)が沈着することによって、肩に激痛がおきる病変です。沈着したカルシウムを免疫が攻撃することで炎症がおきるため、激痛がおきます。痛風で、尿酸結晶を免疫が攻撃すると激痛がおきるのと同じです。違いは、尿酸結晶ではなくカルシウムということです。

痛みは1~2週間で自然に治まりますが、腱板に沈着したカルシウムが消えるわけではありません。手術でカルシウムを切除しても治るとは限らないので、無理して除去する必要はないでしょう。痛み止めで痛みを抑えて、激痛が治まるのを待つのが良いと思います。

腱板にカルシウムが沈着する原因は、明らかになっていません。

しかしカルシウムが沈着しているのですから、カルシウムを多く摂ることは避けたほうがいいでしょう。

 

スマホ性肩痛

五十肩ではありませんが、スマホの使いすぎで肩が痛くなることがあります。とくに、片手でスマホを持って親指で操作しているとなりやすいです。

痛くなるのは肩の筋肉(僧帽筋)で、重さや押されている感じがします。

しかし、肩の筋肉を揉むとかえって痛みが悪化してしまうことが多いです。揉むと筋肉内の微細な血管が破れて、内出血するからです。内出血によって痛みが増悪して「もみ返し」がおきるだけでなく、血栓ができるので脳梗塞や心筋梗塞などをおこすリスクもあります。

治すには、まずスマホを『片手で持って操作するのを止める』ことです。左手で持って右手で操作すれば、痛くなりにくいでしょう。

またスマホを胸の高さに持てば、頭を前に倒さずに見えます。頭を前に倒さないことは、頚椎の変形(ストレートネック)を防ぐためにきわめて重要です。

頚椎の変形が進んでいくと、頚椎から腕にいく神経が圧迫されて、腕や肩が痛くなったりしびれたりするようになります。「頚肩腕症候群」といわれる症状です。

また、変形した頚椎が脊髄を圧迫すると、脚がしびれたり麻痺したりすることがあります。この場合、足の指先から症状が始まって、足首→ふくらはぎ→太ももと症状が広がっていくのが特徴です。

変形した頚椎は元の形に戻ることはないので、普段から「頭を前に倒してスマホを見る」という習慣を直すことが大事です。

 

肺ガンによる肩痛

肺の病気によって、肩が痛くなることもあります。肺の上部に炎症がおきたり腫瘍ができたりすると、肩や腕にいく血管が圧迫されるからです。

肺炎であれば発熱や咳などの症状が出ますから、すぐに分かるでしょう。

しかし腫瘍の場合は自覚症状がないため、気づくことはまずないでしょう。

万一、血液検査で血中カルシウム濃度が高くて、便秘や吐き気、疲労感や倦怠感などがあって肩も痛いという場合は、肺ガンかもしれません。

肺ガンで高カルシウム血症になるのは、腫瘍からパラソルモン(副甲状腺ホルモン)と似た働きをするタンパクが分泌されて、骨からカルシウムが溶け出すからです。骨量が減るため、骨折しやすくもなります。

 

このように、肩が痛くなる原因は色々あるので、「まず原因を考える」ことが重要です。

「原因を考えない施術」は治療とはいえないのです。

 

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