視力を守る秘訣
歳を取ると、白内障や緑内障や網膜はく離などによって視力が大きく低下して、なかには失明してしまう人もいます。それらを防ぐには、どうしたらよいでしょうか?
もっとも必要な栄養はブドウ糖
目に良い成分が多く含まれている食品としてブルーベリーがありますが、実はあまり効果がありません。「米軍パイロットが、ブルーベリーを食べると目がよく見えて夜でも飛行できた」というのは作り話で、実はレーダーがあったから夜でも飛行できただけです。
網膜の毛細血管を守る力が証明されているのは、「カシス・アントシアニン」です。
また、網膜の中心にある黄斑に集まる作用があるのは、「ルテイン」というカロテノイド(黄色素)です。
カシスやルテインはある程度は有効ですが、そういった微量成分よりはるかに重要で、はるかに多く必要な栄養があります。何か分かりますか?
ものを見るために、もっとも必要なのはブドウ糖です。ところが糖質制限などによって、ブドウ糖を十分に摂っていない人がたくさんいるのです。ブドウ糖が足りないと確実に視力が低下していき、重度の低血糖になると失明してしまうことさえあります。
なぜ、ブドウ糖がそれほど必要なのでしょうか? 目がものを見るしくみから説明していきましょう。
目の一番外側には「角膜」があり、その内側に光量をコントロールする「虹彩」があり、そのすぐ後ろに「水晶体」があります。水晶体は厚みを調整することによって、見たいものにピントを合わせます。水晶体を通過した光は、眼球の一番奥にある「網膜」に結ばれます。カメラに例えると、虹彩が絞り、水晶体がレンズ、網膜がフィルムです。
網膜の画像は、視神経を通じて脳(後頭葉)の視覚中枢に送られます。そこで始めて、見えたことになります。
網膜には、光を感知する視細胞がたくさん集まっています。
網膜がものを見るには、非常に多くのエネルギーを必要とします。エネルギーとはATP(アデノシン三リン酸)のことで、ATPはブドウ糖と酸素から生成されます。
同じ面積で比較すれば、網膜は大脳皮質の24倍も多くのエネルギーを必要とします。つまり、目はそれだけ多くのブドウ糖と酸素を必要としているのです。それだけ多くのブドウ糖と酸素を届ける必要があるから、網膜には毛細血管が多いのです。
もし網膜に十分なブドウ糖や酸素が届かないと、視力が著しく低下し、網膜がダメージを受けます。そのダメージが蓄積していくと、網膜で見えない部分が増えていって視野が狭くなります。それが、緑内障の始まりです。
緑内障では眼圧が問題になりますが、緑内障でも眼圧が正常な人はたくさんいます。ということは「眼圧が高いから緑内障になる」のではなく、「網膜のダメージが蓄積した結果、眼圧が高くなる」のです。
つまり、ブドウ糖か酸素が足りない状態で本を読んだりスマホを見たりしていると網膜がダメージを受けて、そのダメージが蓄積されていくと眼圧が高くなるのです。
眼圧は、「下を向いて本やスマホを見ている」ことでも高くなります。
副交感神経を抑制する「抗コリン薬」でも、眼圧が高くなります。
また、「目をこする」とか「頭を激しく振動させる」などといったことも網膜にダメージを与えます。
網膜の中心は「黄斑」といって、もっとも見たいものに焦点を合わせるところです。もし黄斑が変性すると、中心視野がぼやけて一番見たい箇所がはっきり見えなくなります。
要するに、網膜がきちんとものを見るには、かなり多くのブドウ糖と酸素が必要で、どちらかでも足りなければ網膜がダメージを受けて変性していき、視力がどんどん低下していくのです。
高血糖が、網膜の毛細血管をダメにする
網膜はたくさんブドウ糖を必要としますが、高血糖になると毛細血管が傷んで血液を十分に送れなくなります。
高血糖になると、ブドウ糖とタンパク質がメイラード反応をおこして、老化物質であるAGEs(終末糖化産物)が作られるからです。AGEsは毛細血管のコラーゲンに入り込んで、弾力性を失わせていきます。網膜には毛細血管が多いので、AGEsが多くなるほど網膜への血流量が減って視力が低下していくのです。
つまり、低血糖でも高血糖でも網膜の機能が低下していくのです。
したがって、高血糖にもならないようにしなければいけません。それには、どうしたらよいでしょうか?
ご飯を食べないと筋肉が減って、高血糖になる!
「ブドウ糖を摂るから高血糖になる」のではありません!
ブドウ糖は網膜だけでなく、脳も内臓も筋肉もすべての細胞が必要とするエネルギー源ですから、十分に摂る必要があるのです。
ブドウ糖を摂るから高血糖になるのではなく、「血糖を調整するしくみ」が狂っているから高血糖になるのです。
血糖を調整するしくみは、どうなっているのでしょうか?
ご飯やパンなどの炭水化物を摂取すると、消化酵素によって分解されてブドウ糖になって腸から吸収されます。血液に吸収されたブドウ糖(血糖)は、肝臓と筋肉にグリコーゲンの形で蓄えられます。体重70kgの人の場合、肝臓には1日最大100g、筋肉には少なくとも250gのグリコーゲンを蓄えることができます。肝臓と筋肉を併せて、1日350gのグリコーゲンを蓄えることができるのです。カロリーに換算すれば1400kcal、ご飯に換算すると945g(茶碗6杯分)になります。これだけ大量のブドウ糖を蓄えられるのですから、ご飯を食べて高血糖になるわけないのです。
肝臓に蓄えたグリコーゲンは、血糖の減少に合わせて徐々に血液に送り出されて血糖を一定に保っています。
一方、筋肉に蓄えたグリコーゲンは、低血糖になっても血液に送り出すことはできず、筋肉のエネルギーとしてしか使えません。
高血糖になるということは、筋肉にブドウ糖が入っていかないということです。なぜ入っていかないかというと、身体をあまり動かしていないために筋肉グリコーゲンが満タンのままだからです。
あるいは、「インスリン抵抗性」が高くてブドウ糖が細胞に入れないからです。
インスリン抵抗性が上がるのは、なぜでしょうか?
一つは、果糖をたくさん摂るからです。腸から吸収された果糖は、肝臓でほぼ100%中性脂肪に変換されます。それによって、高脂血症や脂肪肝になります。
そして、高脂血症や脂肪肝によってインスリン抵抗性が上がって、高血糖になるのです。
もう一つは、リーキーガットや歯周病によって「炎症性サイトカイン」が増えるからです。炎症性サイトカインは、「炎症をおこせ!」という免疫細胞のメッセージ物質です。炎症性サイトカインが増えるほど、インスリン抵抗性が上がって、高血糖になるのです。
高血糖になる原因をまとめると、
①運動不足で筋肉グリコーゲンが満タンのため、筋肉にブドウ糖が入らない。
②果糖の摂りすぎによって高脂血症や脂肪肝になり、インスリン抵抗性が高くなっている。
③リーキーガットや歯周病によって炎症性サイトカインが増えて、インスリン抵抗性が高くなっている。
これらの原因を放置して、ブドウ糖(ご飯)の摂取量を減らすとどうなるでしょうか?
脳だけで毎日100gのブドウ糖を消費しています。(網膜も脳の一部)
心臓や呼吸を維持し、体温を産生するために、1日180~250gくらいブドウ糖が使われています。脳と合わせて、毎日280~350gのブドウ糖が消費されているのです。
300gのブドウ糖をご飯に換算すると、810g(茶碗5杯分)になります。
ブドウ糖が足りなくても、心臓や呼吸を止めるわけにはいきませんし、脳の活動を止めるわけにもいきません。タンパク質や脂肪もエネルギーとして使われますが、それでも足りなければ筋肉を分解して、タンパク質からブドウ糖を作って脳や網膜に送ります。これを「糖新生」といいます。糖新生をくり返していると、筋肉がどんどん減っていきます。
筋肉が減ればブドウ糖を蓄えられる量が減るので、さらに高血糖になります。
つまり、ご飯を減らすと筋肉が減って、高血糖になるのです。
そして高血糖になると、毛細血管の弾力性が失われて網膜に血液が十分にこなくなり、視力が落ちていくのです。
網膜はく離と飛蚊症を防ぐには?
網膜の一部がはく離することがあります。すると眼科医は、レーザーで治療します。とりあえず難は逃れますが、またいつ再発するか分かりません。防ぐには、どうすればよいでしょうか?
そもそも、なぜ網膜が剥がれるのでしょうか?
網膜と水晶体の間にある「硝子体」というゼリー状の組織が、網膜を後ろに押し付けているのです。硝子体が縮むと、網膜を押し付ける力が弱くなって剥がれやすくなるのです。
硝子体の大半(99%)は水で、その水が減るから縮むのです。
縮んでいくとシワができて、そのシワが蚊に見えるのが飛蚊症です。
つまり飛蚊症は、網膜はく離の前兆なのです。
そして、その原因は『硝子体の水分減少』にあるのです。
紫外線が目に入ると硝子体の水分が減りますから、晴れた日の野外では必ずUVカットのサングラスを着用することが大事です。
硝子体の水分を増やすには、どうすればよいでしょうか?
それには、「体水分量」を増やすことが大事です。
体水分は、新生児が80%、思春期が70%、成人後は65%前後になり、年齢とともに50%台になり、高齢になると40%前後にまで減ってしまいます。つまり、体水分が減ることが老化なのです。
したがって、体水分を増やすことが老化を防ぐ一つのポイントなのです。
しかし、ただ水をいくら飲んでも体水分量は増えません。
水をたくさん飲んでも、すぐに尿から排出されてしまうからです。(詳しくは「水を飲むほど脱水になる」で解説しています)
体水分を増やすには、「松原式補水液」を飲めばよいのです。
<松原式補水液>
水:500ml
やさしお:2g
ブドウ糖:10g
クエン酸:少々
白内障を防ぐには?
白内障は、水晶体が白濁する病変です。
卵の白身を熱すると白くなるのと同じです。
一度濁ると元に戻ることはないので、手術で取り替えるしかありません。
大事なのは、進行を防ぐことです。
防ぐには、原因を知っておくことが重要です。
白内障のもっとも大きな原因は、高血糖です。
高血糖になると眼房水のブドウ糖も増えて、水晶体に吸収されます。水晶体のなかのブドウ糖が増えると、ブドウ糖とタンパク質がメイラード反応をおこしてタンパク質を変性させて、白内障を引きおこすのです。
また、紫外線も白内障の大きな原因です。
紫外線は、角膜と水晶体と硝子体ですべて吸収されてしまうので、網膜には届きません。したがって紫外線で網膜はダメージを受けませんが、角膜と水晶体と硝子体はダメージを受けます。
紫外線は過酸化物を発生させて、細胞の遺伝子(DNA)を破壊し、タンパク質を変性させます。水晶体のタンパク質が変性していくと、白濁してしまいます。
紫外線に強い人はいません。オゾンホールが多い南極の近くでは、野生動物も白内障になっています。
晴れている日の野外では、必ずUVカットのサングラスを着用することが大事です。
白内障を防ぐために重要なのは、ビタミンCです。ビタミンCは網膜から発見されたビタミンで、水晶体タンパクを変性させる過酸化物を消去する主役を担っています。
しかし、すでに白濁してしまったら、いくらビタミンCを大量に摂っても元には戻りません。
水晶体が硬くなると老眼になる
水晶体は一生涯成長し続けて、歳とともに少しずつ大きくなっていきます。
大きくなるほど硬くなって弾力性が失われて、ピントを合わせにくくなります。これが、老眼です。これは病気ではなく、自然現象なので仕方ないです。
近視の人はピントの調整力が落ちやすいので、老眼になるのが早いです。
ちなみに、水晶体の厚みを調整している「毛様体」という筋肉は、歳をとっても衰えません。毛様体のせいでピントを合わせにくくなるのではなく、水晶体自体が成長して硬くなるから老眼になるのです。
ドライアイを治すには?
ドライアイは、角膜の表面が乾いて「小さな傷」がたくさんできることで目が痛くなり、視力が低下する状態です。
角膜を潤わせているのは涙ですが、涙が分泌されていても、脂が足りないと涙が角膜に付着しないので、乾いてしまいます。そして、ただ乾くだけで傷ができていくのです。
革製品が、カヒカヒに乾くとヒビ割れていくのと同じです。皮膚や粘膜もただ乾くだけで傷ができ、放っておくと炎症がおきて、痛みや痒みや充血を引きおこすのです。
乾燥を防ぐには、脂が必要です。「まばたき」をすると、まぶたの裏側にあるマイボーム腺から脂が分泌されます。
パソコンやスマホを見ていると、まばたきが少なくなるからドライアイになるのです。したがって、意識的に「まばたき」をすることが大事です。
そしてドライアイになってしまったら、「ティアバランス」などのヒアルロン酸の目薬をマメにさすことです。眼科で処方してもらう必要がありますが、よく効きます。しかし、薬局で売っているドライアイ用の目薬は効きません。
ちなみに、「ものもらい」に有効なのは(未精製無添加の)ヒマシ油です。どんな薬よりもよく効きます。
首をゆるめると、視力が即効で回復する
首が硬いと頸動脈の血流が悪くなり、目の血流量も減少します。そのため、視力が低下します。
オイルマッサージで首(胸鎖乳突筋)を柔らかくすると、目がよく見えるようになり、視界が明るくなります。施術が終わると「視界が明るくなってハッキリ見える」と、多くの人が言われます。
深視野検査(遠近の距離感を調べる検査)がパスできなくて免許の更新ができなかったタクシーの運転手が、施術で首や肩をゆるめたら、翌日に実によく見えて無事に免許の更新ができた、ということもありました。
定期的に首(胸鎖乳突筋)をゆるめることも、視力を維持するために必要でしょう。