過敏性腸症候群を治す「食事と施術」
過敏性腸症候群(IBS)は腹痛と便秘と下痢をくり返す病変で、心身症や自閉症などの原因にもなります。また、胃酸の逆流やゲップ、咳や痰、動悸や息切れ、めまいや過呼吸、左の肩痛、左腕と左脚のしびれなどを誘発することもあります。
IBSを治すための『食事と施術』を解説しましょう。
IBSの腸内は、乳酸菌が増殖している
IBSの人の胃腸には乳酸菌が異常増殖して、腸内が酸性過多になっています。
乳酸菌やビフィズス菌は「善玉菌」と言われて、健康に良いと信じられてきました。ところが近年の遺伝子解析による研究で、まったく真逆の事実が明らかになっています。例えば、『胃ガン患者の胃には、乳酸菌が多い』といった乳酸菌と発ガンの関連を裏付ける事実が続々と見つかっているのです。
乳酸菌が乳酸を分泌して酸性の環境をつくることで、ガンが増殖しやすくなります。
2017年、バルセロナ大学のリカルド・ペレスートマス博士らは、『ガン患者の血液中には、乳酸が多い』と発表しています。乳酸菌だけでなくガン細胞も乳酸を分泌して、自らが増殖しやすい環境をつくり出しているといいます。
2021年、日本の有明がんセンターで大腸ガンと酪酸との関係を調べた結果、『濃度にかかわらず、酪酸が大腸ガンを誘発する』と結論づけられています。
つまり、乳酸菌が胃腸を悪くするのです。
IBSの患者の胃のなかには、乳酸桿菌やベイロネラ菌といった乳酸菌が非常に多いことが判明しています。ベイロネラ菌は乳酸から、酢酸やプロピオン酸という短鎖脂肪酸をつくります。
乳酸菌が乳酸を産生して腸内が酸性になると、盲腸が異常発酵して大量のガスを発生します。盲腸が膨満すると、反射的に下行結腸やS状結腸が痙攣して細くなります。そのため便秘になり、ガスが横行結腸にたまるのです。[1]
さらに、IBSから心身症が引きおこされます。
乳酸菌が産生する乳酸によって血液が酸性化すること(乳酸アシドーシス)で、思考力や記憶力が低下して疲労感や脱力感などをおこすブレイン・フォグがおきます。
うつ病の人の腸内には、便秘の原因となるアリスティペス菌という乳酸菌が増殖しています。[2]
また母親がIBSだと、自閉症児が生まれやすくなります。自閉症児の腸内には、乳酸桿菌とプロピオン酸が多いことが分かっています。プロピオン酸は血液脳関門を通過して脳内に入り、神経に異常を引きおこします。[3]
このように、IBSや心身症を引きおこすのは胃腸内で異常増殖した「乳酸菌」なのです。
したがってIBSを治すには、胃腸内の乳酸菌を『減らす』ことが大事です。
乳酸菌は、豆や野菜や雑穀(食物繊維)と乳製品(乳糖)を食べるほど増えます!「野菜が多い食事が良い」「ヨーグルトが腸に良い」という常識を見直す必要があるでしょう。
また、乳酸菌やビフィズス菌のサプリメントは逆効果になります。
横行結腸のガスが『逆流・咳・動悸・息切れ・めまい・過呼吸』を引きおこす
胃酸が逆流する、ゲップが出る、空咳が出る、喉がイガイガする、心臓がバクバクする、息切れやめまい、過呼吸とパニック発作などといった症状も、IBSから誘発されます。
IBSの人の横行結腸は、大量のガスで膨満しています。
横行結腸が膨満すると、胃が圧迫されて胃酸が逆流して、ゲップが出るようになります。
そして胃酸によって食道の粘膜がただれると、空咳が出たり、胸焼けがしたり、喉がイガイガしたりするようになります。
また、ガスで押し上げられた横隔膜が心臓や肺を圧迫することで、動悸や狭心症のような胸痛や息切れやめまいなどがおきやすくなります。このような横隔膜による心臓や肺の圧迫による症状は、「ロエムヘルド症候群」といいます。
横隔膜が押し上げられたままだと十分に息を吸えないため呼吸が速くなりやすく、速い呼吸を続けていると過呼吸になって、パニック発作がおきやすくなります。
こういった症状は横行結腸がガスで膨満したことによっておきるので、ガスを発生する食品を多く摂るほど悪化します。
とくにガスを多く発生する代表的な食品は、豆や野菜(とくにゴボウやレンコン、玉ネギ)、雑穀やキノコといった「食物繊維」が多い食品と、牛乳やチーズ、ヨーグルトといった「乳糖」が多い食品です。
IBSが『左の肩痛・左腕と左脚のしびれ』を引きおこす
左の首や肩の痛み、左腕と左脚のしびれが、IBSから引きおこされることがあります。
なぜ症状が、左側に出るのでしょうか?
それは、大腸の左側に「膨満と攣縮」があるからです。
過敏性腸症候群は、まず盲腸が異常発酵してガスで膨満します。
盲腸が膨満すると、左側の下行結腸からS状結腸が痙攣して細くなります。
盲腸で発生したガスは横行結腸に移動しますが、下行結腸とS状結腸が収縮しているため排出されず、横行結腸に溜まります。そのため、横行結腸が大きく膨満します。
下行結腸からS状結腸の痙攣によって、左脚への血管も収縮します。そのため左脚に十分な血液が巡らなくなるから、左脚がしびれるのです。
また、横行結腸の膨満によって胃が圧迫されて、胃痛や左わき腹の痛み、左の首や肩の痛み、左腕のしびれなどが引きおこされます。横行結腸の膨満や胃の圧迫が、迷走神経を通じて脳(延髄)に伝えられると、(延髄から分岐している)副神経が興奮して、首や肩の筋肉(胸鎖乳突筋・僧帽筋)を緊張させてしまうと考えられます。
迷走神経をゆるめる「VR法」
腸内ガスを抜くと、胃の痛みや重苦しさが軽減します。そして、左の首や肩の痛み、左腕と左脚のしびれが軽減し、呼吸が深くできるようになります。
腸内ガスを抜くために考案した施術が「VR法」です。Vagus nerve Relaxation(迷走神経弛緩法)の略です。骨格矯正ではなく『迷走神経の緊張をゆるめる』ことを目的とした施術です。
IBSをはじめ、偏頭痛やPMS(生理前症候群)、うつ病やパニック発作、花粉症や皮膚炎や喘息、リウマチ性関節炎などといった疾患はすべて副交感神経が緊張して、免疫が過剰に働いて炎症がおきやすくなっています。したがって、副交感神経(とくに迷走神経)の緊張をゆるめれば症状が軽減します。
施術はすべて、無臭ココナッツオイルに抗酸化力がきわめて高いデルタ・トコトリエノール(スーパービタミンE)を配合した『ロイヤルアメイジング・クリーム』を、体重を一切かけずに(合気術による圧で)すり込んでいきます。
迷走神経をゆるめるには、首の「胸鎖乳突筋」をゆるめることが必要です。
胸鎖乳突筋をゆるめるには、大胸筋と咀嚼筋をゆるめればよいのです。
仰向けで横になった状態で、まず大胸筋をゆるめて、次に咀嚼筋をゆるめます。
胸鎖乳突筋がゆるんだら、「腸内ガス」を抜くマッサージを行ないます。
腹部に『ロイヤルアメイジング・クリーム』が浸透して適度な圧がかかると、ガスが腸から血液に吸収されて、肺から呼気とともに排泄されていきます。そして、10分~20分ほどでガスが抜けて、腹部のシコリや圧痛がなくなります。
最後に、腰かけた状態で肩(僧帽筋)をチェックします。凝っている場合は、硬い側の大腸(右は上行結腸、左は下行結腸)を押圧します。すると、肩のコリがなくなります。
[1] Farmer AD, et al. World J Gastroenterol. 2014;20(17):5000-7.
[2] Naseribafrouei A, et al. Neurogastroenterol Motil. 2014;26:1155-62.
[3] Abdelli LS, et al. Sci Rep.2019;9(1):8824.