うつ病を治す秘訣

うつ病は「心の病」と言われていますが、実は違います。

また、栄養を十分に摂れば治るわけでもありません。

うつ病を治すには、どうすればよいでしょうか?

 

栄養療法でうつ病は治らない!

うつ病は栄養療法(オーソモレキュラー)で治ると言われていますが、私は治った例をみたことがありません。栄養療法を行なっているクリニックに通うと、毎月5万~10万円ものサプリメントを買わされます。それを1年以上続けて、うつ病が治らないという方が何人もいます。たかが微量栄養素やプロティンに5万も10万もかかること自体、どうかしています。

私自身も、アレルギーや胃腸虚弱、冷え性(低体温)を治すために栄養療法を試みたことがあります。栄養療法の創始者であるエイブラム・ホッファー博士の著書「Orthomolecular Medicine for Everyone」と「Putting It All Together: The New Orthomolecular Nutrition」の2冊を頼りに、iHerbなどから何種類もサプリメントを取り寄せて10年ほど飲み続けましたが、アレルギーも胃腸虚弱も冷え性も治りませんでした。体調は、何も変わりませんでした。

2012年に、『万病はリーキーガットによっておきる』ことを知りました。

リーキー(leaky)は「漏れやすい」、ガット(gut)は「腸」の意味ですから、直訳すれば「漏れやすい腸」ということです。

例えば、2リットルのバケツに水を満たすのに、50リットルの水が必要だとしたら、バケツに孔があいていると考えられます。そうであれば、バケツの孔を塞ぐべきでしょう。

ビタミンやミネラルなどの「微量栄養素」も同じです。ごく微量あれば足りる栄養素を、なぜ大量に摂らなければいけないのでしょうか? それは、どこかで漏れているからではないでしょうか?

つまり、リーキーガットということです。

リーキーガットとは、『腸の栄養を吸収する細胞同士の結合がゆるむ』ことです。腸粘膜の絨毛の最先端にビッシリと並んでいる栄養吸収細胞は、お互いに固く強く密着しています。その密着結合がゆるむ(リーキーガットになる)と、細胞間のわずかな隙間から未消化なタンパク質や腸内細菌が吸収されてしまいます。すると、腸の免疫細胞が「異物が侵入した」と判断して、異物を排除しようとします。それによって軽度な炎症(慢性炎症)がおきます。この炎症は、通常の炎症と違って痛みや発熱、発赤などの症状はありませんが、血液中に「炎症性サイトカイン」を増やします。サイトカインは免疫細胞のメッセージ物質で、炎症性サイトカインのメッセージは「炎症をおこせ!」です。

腸がリーキーガットになることで、血液中に「炎症性サイトカイン」が増えて、全身に「炎症をおこせ!」というメッセージが伝わるのです。その結果、身体のあちこちに炎症がおきやすくなります。

実はうつ病も、リーキーガットによっておきるのです。

 

うつ病は『脳の炎症』

うつ病は「心の病」ではなく、「脳の炎症」であることが明らかになっています。

根本原因は、リーキーガットです。

リーキーガットによって、血液中に炎症性サイトカインが増えます

その血液は、脳内にも流入します。

炎症性サイトカインによって、脳内の免疫細胞(ミクログリア)が活性化して、脳に軽度な炎症がおきます

すると、「キヌレニン」という神経毒がつくられます。

キヌレニンによって、シナプスに放出されるセロトニンが減少します。

さらにキヌレニンは、神経細胞を害して、過剰に興奮させて消耗させます。

そして最終的に、神経細胞を殺してしまいます。

こうして脳内の免疫細胞(ミクログリア)が活性化(暴走)することによって、セロトニンの神経伝達ができなくなってしまう結果、頭に霧がかかったように意識がボーっとしたり(ブレインフォグ)、頭痛がしたり、不眠になったりして、うつ病になるのです。

脳内の免疫細胞を活性化(暴走)させるのは炎症性サイトカインであり、それはリーキーガットになった腸でつくられているのです。

つまり、うつ病の根源は「腸」にあるのです。腸が悪くなると、脳に軽度な炎症がおきて、脳の機能が低下するのです。

 

腸内細菌が分泌した毒素が、脳の機能を低下させる

リーキーガットになった腸から、腸内細菌が血液に侵入していることが明らかになっています。

2014年6月に、順天堂大学とヤクルト中央研究所の共同研究グループが、「糖尿病患者の血液中に“生きた腸内細菌”がいた」と発表しました。腸内細菌が血液に侵入してしまうリーキーガットが、糖尿病を悪化させる要因になっているということです。

いくら善玉菌でも、血液に侵入すれば細菌感染であり、それは炎症性サイトカインが増える要因になります。そして炎症性サイトカインが増えるほど、インスリン抵抗性(インスリンが効きにくくなること)が上がって高血糖になります。インスリン抵抗性が上がれば、脳の神経細胞もブドウ糖を取り込みにくくなります。すると脳のエネルギー(ATP)が不足して、脳の機能が低下すると考えられます。

 

 

さらに、リーキーガットになった腸から吸収された毒素も、脳の異常を引きおこします。

カリフォルニア工科大学のイレイン・シャオ博士は、自閉症モデルマウスを使った実験で、腸がリーキーガットになっていることと、血液中に「4EPS」という毒素が正常マウスの80倍も多いことを確認しました。また、正常なマウスに4EPSを注射すると、コミュニケーション能力が著しく低下しました。(この論文は、2013年に科学雑誌「セル」に掲載されました。)

4EPSは、腸内細菌が分泌した毒素です。シャオ博士の実験は、『腸内細菌が分泌した毒素が、リーキーガットになった腸から吸収されて、脳の機能を著しく低下させた』ことを示しています。

 

リーキーガットの原因は何か?

以上説明してきたように、うつ病の根源はリーキーガットにあるのです。

では、なぜリーキーガットになるのでしょうか?

リーキーガットの原因は、たくさんあります。主な要因をあげておきましょう。

まずは、「痛み止め」です。正式には解熱鎮痛消炎剤といい、NSAIDsと呼ばれることもあります。ロキソニンやイブプロフェン、ボルタレンやアスピリンなどといった痛み止めは、胃腸の粘膜を傷めて胃潰瘍やリーキーガットを引きおこします。

正露丸」も、リーキーガットの大きな原因となります。正露丸の主成分であるクレオソートは、腸管壊死をおこす作用があります。

漢方薬」も、リーキーガットの原因です。「漢方薬は身体にやさしく、穏やかに効いて長期にわたって飲めば体質を根本から改善できる」といわれていますが、実はどんな漢方薬でもリーキーガットを助長しますので、飲み続けるのはとても危険です。

 

食べ物では、豆類や雑穀などに含まれる「レクチン」がリーキーガットを引きおこす主な原因です。

例えば、大豆は「畑の肉」といわれて、ヘルシーな食品であるかのように喧伝されています。しかし、欧米では古くから「大豆毒」について知られていますから大豆を食べる人はほとんどいなくて、専ら豚のエサか油の材料として使われています。

日本では、豆腐や豆乳、枝豆や煮豆、厚揚げやガンモドキ、キナコや大豆プロティンなどを日常的に多く摂取している人が多く、それがリーキーガットを助長している大きな原因になっているのです。

また、小麦に含まれる「グルテン」もレクチンの一種で、リーキーガットをおこす主な原因物質です。グルテンは、グリアジンとグルテニンに分解されて吸収されます。

グルテンやレクチンなどが入ってくると、腸の粘膜から「ゾヌリン」が分泌されて、腸の栄養吸収細胞の密着結合をゆるめてしまうのです。

さらに、レクチンやグリアジンがリーキーガットになった腸から吸収されて、血液によって全身に循環します。そして、関節の軟骨や神経などに蓄積していき、関節炎や神経痛をおこす原因となります。また、脳に有害なものが入り込まないようにブロックしている「血液-脳関門」をジワジワと壊していきます。血液-脳関門のバリアが壊れた状態は「リーキーブレイン」と呼ばれます。ブレイン(brain)は「脳」の意味です。

つまり、日常的にレクチンやグルテンを摂り続けることで、脳のバリア機能も少しずつ壊されていく恐れがあるのです。そして、もしバリア機能が失われると、脳に有害な重金属や化学物質などが流入して、炎症を悪化させることになりかねないのです。

 

果糖も、リーキーガットを悪化させる大きな原因です。

果糖は、果物や果汁、砂糖、果糖ブドウ糖液糖が入ったドリンクなどに多く含まれています。

果糖は、腸内のカンジダの大好物です。抗生物質を服用すると、病原菌だけでなく善玉菌も死滅してしまいます。その結果、カンジダのような日和見菌が増えてしまいます。そこに果糖が入ってくると、カンジダがどんどん増殖してしまいます。

腸内で増殖したカンジダは、菌糸を伸ばして腸から血液に入り込み、ほかの器官に移動して炎症を引きおこします。そのため炎症性サイトカインが増えて、脳内の免疫細胞(ミクログリア)を活性化(暴走)させます。

したがって、うつ病を改善したければ、果糖を徹底的に控えることが重要です。また、リーキーガットの原因になる大豆(味噌や納豆を除く)や小麦(パンや麺類)をできるだけ食べないようにすることが重要です。

 

うつ病を治すための食事

しっかり食べるべきなのは、「ご飯と肉や魚」です。

ご飯をしっかり食べて、脳のエネルギー源であるブドウ糖を補給することです。

また、精神を活性化させる神経伝達物質はタンパク質からつくられますから、肉や魚からタンパク質を摂取することが大事です。

体内でつくれないアミノ酸(必須アミノ酸):トリプトファン、リジン、スレオニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニンの8種類のうち、脳にとってとりわけ重要なのは、トリプトファンとメチオニンです。

トリプトファンからセロトニンがつくられて、暗くなるとセロトニンがメラトニンに変わって熟睡を促します。

またメチオニンは、ビタミンB12の協力を得てアデニンと結合し、気分を高めてうつ病の症状を改善する作用があるS-アデノシルメチオニンに変わります。

トリプトファンやメチオニンやビタミンB12は、植物性の食品からは十分には摂れないので、肉や魚から摂取する必要があります。

 

ダメージを受けた脳は「運動」で回復する

脳の免疫細胞(ミクログリア)の暴走によって、神経毒・キヌレニンによってダメージを受けた脳の神経は、運動によって修復が促されて回復していく可能性があります。

運動すると、筋肉から繊維芽細胞成長因子(FGF‐2)や血管内皮成長因子(VEGF)などといった「神経の修復を促す成長因子」が分泌されます。これらの成長因子が、血流によって脳に運ばれてニューロンを成長させて修復を促し、脳をストレスに対して強くするのです。(このことは、米国国立老化研究所の神経科学部長・マーク・マットソン博士の実験で明らかになっています。)

ニューロンにはもともと修復・回復のメカニズムが備わっていて、運動によってニューロンの回復プロセスを活性化させることができるのです。そして運動といってもスポーツや競技をする必要はなく、ただ歩いたり走ったりするだけ十分な効果が得られるのです。

私がお勧めするのは、『ゆったり優雅に歩くこと』です。セカセカ歩くのではなく、太極拳のようにゆっくりと、バレエのように優雅に歩くことです。そのように歩けば副交感神経モードで深くゆっくりした呼吸になるため、心身が回復しやすくなるのです。

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