筋肉を増やせば、健康的に痩せられる!

ダイエットをするたびにリバウンドして、ますます「太りやすい身体」になってしまう人がたくさんいます。そもそも、なぜリバウンドするのでしょうか?

また、ダイエットとリバウンドで、身体のなかでどんな変化がおきているのでしょうか?

そして、健康的にダイエットするためには、どうすればよいのでしょうか?

その秘訣は、「インスリン抵抗性を下げる」ことにあります。インスリン抵抗性とは、「インスリンが効きにくくなる」ことです。すると、血液中のブドウ糖(血糖)が細胞内に入りにくくなって、高血糖になります。すると血糖を下げるために、インスリンが大量に分泌されます。こうしてインスリンが多くなるほど、脂肪が脂肪細胞に吸い込まれていって太っていくのです。

 <インスリン抵抗性⇒高血糖⇒高インスリン⇒肥満>

 

劇痩せすると、脂肪肝になる!?

1ヶ月に5キロ以上も体重を減少させるダイエットをすると、肝臓に脂肪がたまって「脂肪肝」になります。すると、肝臓内のインスリン抵抗性が高まります。

通常、食後に腸から吸収されたブドウ糖は肝臓でグリコーゲンとして蓄えられて、徐々に血液に放出されていくことで血糖値を一定に保たれます。ところが肝臓内のインスリン抵抗性が高まると、肝細胞にブドウ糖が取り込まれにくくなりますから、グリコーゲンに変換できなくなります。そのためブドウ糖がダダ漏れ状態になり、高血糖になります。

高血糖になると、血糖を下げるためにすい臓から大量のインスリンが分泌されます。大量のインスリンが、脂肪を皮下脂肪や内臓脂肪に吸収させていきます。その結果、体脂肪が増えていって太るのです。

つまり、劇痩せすると脂肪肝になり、それによって肝臓のインスリン抵抗性が上がるため、『太りやすい身体』(高インスリン体質)になってしまうのです。

 

食事制限や糖質制限で痩せると、筋肉が減ってしまう!

食べないとか糖質を制限するといった痩せ方をすると、筋肉が減ってしまいます。体重が落ちるのは、筋肉が減るからです。

筋肉が減ると、基礎代謝が低下します。すると安静時に消費されるカロリーが減るので、『太りやすい身体』になります。

いずれ我慢の限界がきて食べ出すと、元の体重より増えてしまいます。このとき増えるのは筋肉ではなく、脂肪です。

つまり、食べないで痩せると筋肉が減って、食べると体脂肪が増えるのです。こうしてダイエットとリバウンドをくり返すたびに、筋肉が減って脂肪が増えていき、ますます『太りやすい身体』になっていくのです。

 

激しい運動や肉体労働をすれば痩せる」というのもウソです!

1940年にノースウエスタン大学のHugo Rony博士が、こんな発言をしています。

「エネルギー消費量が多くなると、食欲も増す。重労働をしている男性は、座業に従事する男性より多く食べる。統計によれば、木材の切り出しを行なう伐採人の1日の摂取カロリーは5,000kcalであるのに対して、洋服の仕立屋は約2,500kcalにすぎない。職業を軽労働から重労働に、あるいは重労働から軽労働に変えても、すぐにその職業に応じた食欲に変化する。」

つまり、運動や肉体労働でカロリーを多く消費しても、食べる量が必然的に増えるから痩せないということです。

 

また、「食べないで運動すれば痩せる」というのもウソです!

空腹時に運動すれば、あたかも体脂肪がエネルギーとしてガンガン燃えていくような気がします。しかし実際には、脂肪ではなく筋肉が減っていくのです。

アメリカの80年以上におよぶ肥満動物の研究で明らかになったのは、『肥満したげっ歯動物が餓死した場合、脂肪組織の多くが残存している』ということです。人間も同じで、飢えると筋肉が燃料として使われて、最終的には心筋まで痩せ細っていくのです。

食べないでいると脳は「飢餓」と判断して、「カロリーを少しでも多く脂肪に変えて蓄えよう」とします。だから、空腹でいると体脂肪は増えるのです。空腹で体重が減るのは、筋肉が減るからです。つまり空腹で体重が減っても、体脂肪は減らないのです。

大事なのは、『筋肉量を増やして体脂肪を減らす』ことです。筋肉を増やすことが先で、それから体脂肪が減っていくのです。筋肉が増えることによって基礎代謝が高まる結果、体脂肪が減っていくのです。

 

慢性炎症によって太る!

肥満の根本原因は、『慢性炎症』であることが分かっています。

慢性炎症とは、通常の炎症と違って、痛みや発熱、発赤、腫脹などといった自覚症状がない「くすぶり型の炎症」です。主な慢性炎症は、次の3つです。

歯周病

リーキーガット

内臓脂肪

これらの慢性炎症によって炎症性サイトカインが増えるため、インスリン抵抗性が上がります。インスリンが効きにくくなると、ブドウ糖が細胞に入りにくくなり高血糖になります

すると、血糖を下げるためにすい臓から大量のインスリンが分泌されます。この大量のインスリンによって、脂肪が脂肪細胞に吸収されていって太るのです。

つまり、『慢性炎症⇒インスリン抵抗性⇒高血糖⇒高インスリン症⇒体脂肪増加』となるのです。

したがって、慢性炎症を抑えることが肥満を防ぐ秘訣なのです。

 

歯周病は、歯周の細菌やカビによって歯茎が侵されておきる慢性炎症です。

 

内臓脂肪は、ある量を超えると内臓脂肪から炎症性サイトカインが分泌されて、炎症をおこします。たとえば脂肪肝が進むと脂肪性肝炎になり、それを放置しておくといずれ肝硬変になってしまいます。

 

リーキーガットとは、『腸の粘膜の栄養を吸収する細胞同士の結合がゆるむ』ことです。それによって、本来なら吸収されない未消化なタンパク質や腸内細菌が血液に吸収されてしまいます。すると腸の免疫細胞が「異物が侵入した」と判断して、異物を排除しようとします。その結果、慢性炎症がおきて、血液中に炎症性サイトカインが増えます。それによってインスリン抵抗性が上がって高血糖になるため、インスリンが大量に分泌されて太るのです。

リーキーガットの主な原因は、以下の5つです。(これ以外にも原因はあります)

痛み止め(痛み増強物質:プロスタグランジンを抑制することで、胃腸の粘膜を保護する作用が弱くなるため)

レクチン(小麦や雑穀、豆類、ウリ科やナス科の野菜などに多く含まれる植物毒)

腸内ガス(腸内細菌が異常増殖してガスが過剰に発生すると、膨満によって腸壁が引き伸ばされて腸内細菌が血液に侵入しやすくなる)

漢方薬(生薬の主成分であるアルカロイドは神経毒で、胃腸に炎症をおこす)

ランニング(腸管が揺さぶれることで「腸温」が上昇するため)

痩せたければ、リーキーガットの原因をなるべく減らすことです。

 

運動しても体脂肪は減らない?

とりわけ「ランニング」は意外に思われたでしょう。ランニングすると、「腸温」が上がってリーキーガットになってしまうこともあるのです! そのとき腸内にレクチンやグルテンがあったら、炎症がより大きくなるでしょう。

リーキーガットになると、炎症性サイトカインが増えて、インスリン抵抗性が上がって太りやすくなります。

したがって、「カロリーの消費量が多い運動をすればいい」というわけではないのです。

 

そもそも、「運動で体脂肪を減らす」のは大変です。

体脂肪1キロには、およそ7000kcal蓄えられています。

7000kcalを消費するには、どれだけ運動すればいいでしょうか?

体重70キロの人が5kmジョギングすると、70kg×5km=350kcal消費できます。

7000kcal消費するには、その20倍=100km走らないといけません。フルマラソンの2.3倍100km走っても、体脂肪をたった1キロしか落とせないわけです。

まして体脂肪を5キロとか10キロ落とすとなったら、どうでしょうか?

つまり、運動で体脂肪を減らすことはできないのです。

 

しかし! それでも運動は痩せるためには有効です。なぜかというと「交感神経を緊張させる」からです。日中に交感神経が活発に働くようになれば、体脂肪が徐々に減っていくのです。

米国肥満学会会長だったジョージ・ブレイ博士は、1991年に「モナリザ仮説」を発表しました。モナリザといっても、レオナルド・ダ・ヴィンチの名画の女性とは無関係で、「Most Obesities kNown Art Low In Sympathetic Activity」の略(MONALISA)です。

ジョージ博士は「太っている人は、交感神経の機能が低い」ことから、「自律神経の活動低下によって、体重調節の機能が乱れることが肥満の原因と提唱したのです。この仮説はその後、多くの動物実験やヒトでも正しいことが立証されました。

しかし、「精神的ストレス」によって交感神経を緊張させると心身に弊害を及ぼします。

それに対して「運動」は、健康的に交感神経を高めることができます。運動によって交感神経の働きを高めると、運動後にストンと下がって副交感神経も正常に働くようになるからです。

 

朝食を摂らないと太りやすくなる!

食事で摂取した糖質は、腸で分解されてブドウ糖になって血液に吸収されます。腸から吸収されたブドウ糖は、まず肝臓に運ばれます。そして、肝臓と筋肉にグリコーゲンとして蓄えられます。

体重70キロの男性の場合、肝臓に約100g(400kcal)、筋肉に約250g(1000kcal)のグリコーゲンを蓄えることができますから、合計で1400kcalものグリコーゲンを蓄えられます。しかし、1回の食事で1400kcalも摂ることは普通ないでしょう。つまり身体は、十分すぎるほど糖質を蓄えておけるのです。

肝臓のグリコーゲンは、血糖が少なくなると少しずつ分解されて放出されていきます。それによって血糖が一定に保たれます。

それに対して筋肉のグリコーゲンは、筋肉の収縮エネルギーとしてしか使えません。ですから低血糖になっても、筋肉のグリコーゲンを血液中に放出することはできないのです。これが肝臓グリコーゲンと筋肉グリコーゲンの大きな違いです。

 

夜にたっぷり食べて、肝臓も筋肉もグリコーゲンが満タンになったとすると、翌朝はどうなっているでしょうか?

翌朝は、筋肉グリコーゲンはほぼ満タンになったままですが、肝臓のグリコーゲンは枯渇しています。肝臓のグリコーゲンは、寝ている間にも脳や心臓や肺や体温の産生などに使われて、8~12時間で枯渇してしまうのです。

つまり朝は、筋肉グリコーゲンは十分あるから身体は動きますが、朝食を食べないと低血糖になっているので頭は働かないのです。

自治医科大学の香川靖雄教授のグループによる報告によると、「寮で暮らす学生を対象に、朝食を摂る学生と摂らない学生の成績を比較したところ、摂らない学生は摂る学生より成績が悪かった」ということです。朝食を食べないと低血糖になるので、集中力や記憶力などといった脳の働きが低下するのです。低血糖になると、悪寒、疲労感や虚脱感、頭痛やイライラなどといった自律神経の失調症状も現れます。

また、ドライバーを調べた調査で、「朝食を食べていないと事故がおきやすい」ことが分かっています。低血糖で、集中力や判断力が低下するからです。

低血糖のままでは脳の機能を維持できないため、身体は何とかしてブドウ糖を脳に送ろうとします。どうするかというと、筋肉を分解して、そのタンパク質からブドウ糖を作り出すのです。これを「糖新生」といいます。

糖新生のために最初に犠牲になるのが、脚の筋肉です。そのため糖新生をくり返していると太ももやふくらはぎが細くなって、足腰が弱くなり、腰痛や膝痛に悩まされるようになります。

脚の次は、肩や胸の筋肉が減っていきます。そのため首や肩のコリが強くなり、いずれ頚椎が変形して、首や肩の痛みや腕の神経痛などに悩まされたりするようになります。

 

こうして糖新生によって筋肉量が減るほど、筋肉に蓄えられるグリコーゲンは少なくなっていきます。また体温の大半を作っているのは筋肉なので、筋肉が減ると基礎代謝が低下します。その結果、食後に高血糖になるのです。

高血糖になると、血糖を下げるためにすい臓から大量にインスリンが分泌されます。この大量のインスリンによって、脂肪が脂肪組織に吸収されていって太るのです。

つまり、朝食を抜くと『低血糖⇒糖新生⇒筋肉減少⇒食後高血糖⇒高インスリン⇒体脂肪増加』となるので太るのです。

朝食をしっかり食べることによって食後熱産生が高まり、日中の筋肉合成も高まり、昼や夜の食後高血糖もおきにくくなります。ですから、太りたくなければ朝食はしっかり食べることです。

 

筋肉を増やせば、体脂肪を減らせる!

健康的にダイエットをするには、筋肉を増やせばいいのです。

筋肉が増えれば、安静時にも消費されるカロリー(基礎代謝)が増えるので、自ずと体脂肪が減っていくのです。また、筋肉が多いほど筋肉にグリコーゲンを多く蓄えることもできますから、高血糖にもなりにくくなります。

ですから、「筋肉を増やす」ことが「理想的なダイエット」なのです。

 

筋肉を増やすために、もっとも大事なのは「筋トレ」より「食事」です。

栄養を十分に摂らないで筋トレをしても、筋肉を増強させるどころか、反対に筋肉が減ってしまいます。筋肉をエネルギーとして使ってしまうからです。筋肉を増強させるには、十二分に栄養を補給する必要があるのです。

筋肉を増やす食事というと、「タンパク質をできるだけ多く摂る」ことだと考えている人が少なくないでしょう。しかし、過剰なタンパク質は尿から排泄されてしまいますし、タンパク質の過剰摂取で逆に筋肉や骨量が減ってしまう恐れもあります。

「タンパク質の摂取量と運動が、筋タンパクの合成に及ぼす影響」を調べた実験によると、タンパク質の摂取を体重1kgあたり0.86g→1.4gに増やすと、運動する群では筋タンパクの合成が高まりますが、運動しない群では大差はありません。つまり「運動しなければ、タンパク質の摂取を増やしても筋肉は増えない」わけです。

タンパク質の摂取を1.4g→2.4gに増やしても、筋タンパクの合成はほぼ変わりません。つまり、タンパク質を過剰に摂ってもエネルギーとして使われるだけで、筋肉が増えるわけではないのです。ここから「アスリートのタンパク質の摂取上限は、1日に体重1kgあたり2g」とされているのです。

激しい運動をしない人であれば、体重1kgあたり1g~1.2gのタンパク質で十分なのです。

体重70kgの人は、毎日タンパク質を70g摂る必要があるのです。

肉や魚にはタンパク質が20~25%しか含まれていませんから、70g×4~5=280~350gの肉や魚や卵を食べる必要があるのです。最低このくらいタンパク質を摂らないと、筋肉は増えないのです。

避けたほうがいいのは、豆腐や豆乳やキナコ、大豆プロティンといった大豆製品です。これらの大豆製品には、トリプシン・インヒビターという「タンパク質の消化を阻害する成分」が含まれているため、タンパク質が十分に吸収されなくなります。

 

そして、筋肥大にもっとも必要なのは「糖質」です! いくらタンパク質を摂っても、糖質が足りないと筋肉は大きくなりません。糖質を摂ることで分泌されるインスリンが、タンパク質を筋肉に変えていくのです。

スポーツ栄養学では、「もっとも筋肉を増強させる黄金比」が明らかになっています。

それは、『糖質3:タンパク質1』です。

体重に応じた必要量をこのバランスで食事していれば、自ずと筋肉は増えていくのです。

 

ちなみに、理想的な糖質は「白米のごはん」です。

白米ごはんには、リーキーガットの原因になるレクチンや、腸内ガスを発生する成分が含まれていないからです。

それに対して玄米や雑穀には、リーキーガットの原因になるレクチンやサポニン、腸内ガスを発生する成分が含まれています。またパンやパスタやラーメンなどには、リーキーガットの原因となるグルテンが含まれています。

というわけで、白米ごはんが良いのです。

 

筋トレをするベストタイムは?

筋トレは、いつ行なうのが効果的でしょうか?

答えは、夕方です。

夕方はもっとも運動能力が高くなる時間で、筋肉や関節を痛めにくいのです。

また夕方に運動して体温を上げておくと、寝る頃に体温が下がって熟睡できます

そして、夕飯前に筋トレで筋肉グリコーゲンを枯渇させておけば、夕飯で摂取したブドウ糖が速やかに筋肉に取り込まれていきますから、食後に高血糖になりません。高血糖にならなければインスリンが大量に出てこないので、体脂肪は増えません。

さらに、夕方に筋トレすると、夕飯によって筋肥大効果が高くなります。

筋トレ後なるべく早く(2時間以内に)糖質とタンパク質を摂取することで、筋肉が肥大します。ところが筋トレ4時間後に摂取すると、筋肉ではなく脂肪が増大してしまいます。

つまり夕方に筋トレすると、筋肥大するタイミングで食事が摂れるのです。

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